唯一無二の司令塔・山本理仁。幾度の挫折を乗り越えて進化、世代屈指のレフティが満を持して世界の舞台へ【パリ五輪の選ばれし18人】
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悔しさを力に変え、自らの足で前に進もうとしてもがいた。すると2021年9月、永井氏の後任としてやってきた堀孝史監督(現・横浜FCヘッドコーチ)のもとで復活を果たす。 最も得意とするセントラルMFのポジションに固定されると、創造性豊かなプレーでチームを牽引。苦手だった守備に意識がいき過ぎていた自分を見つめ直し、良さを出すことに注力した。そこから一気にヴェルディの中心となり、2022年3月には大岩ジャパンの立ち上げ合宿にも招集。そこからは周知の通りでパリ五輪を目ざすチームで主軸を担い、クラブでも充実の時を過ごした。 そして同年の7月、ついにステップアップを果たす。「2日間ぐらい寝れなかった」というほど愛着のあるクラブを離れるのは簡単ではなかったが、ガンバ大阪入りを決断。J1の舞台に足を踏み入れ、さらなる成長を目ざした。 ポジション争いは厳しさを増したが、そうした状況も楽しめるようになり、ベンチスタートが続いても腐らずに自分と向き合った。そのスタンスは2023年夏に加わったシント=トロイデンでも変わらない。 さまざまなことを経験し、山本理仁は逞しくなった。今年の春に開催されたパリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップでは副キャプテンを任されるまでになった男は、本大会でどのようなプレーを見せるのか。 リヒトという名前の由来はドイツ語で“光”。自らの足で光を探し出したレフティは満を持して、自身初の世界大会に挑む。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)