途絶えかけた伝統「救出」事例も 「地域おこし協力隊」開始10年
「共生」というと聞こえはいいが、新たな土地や田んぼを開墾しながら無農薬でのコメ作りには苦労がつきものだ。事実、今年は1トンの収穫を見込んでいたが、イノシシに田んぼの多くを荒らされてしまい、収穫できたのは見通しの約半分にとどまった。 「誰の田んぼを継ぐ、というわけじゃないから、新しく自分の耕す田んぼを見つけたり開拓したりしないといけない」と道範さん。
米の収穫の時期とネット販売の注文が重なる時は休む暇がない。世界的なIT企業でマーケティング担当をして多忙な会社員生活を送っていた優さんだが、「何から何まですべてを自分たちでやらないといけないのが大変」と話す。特に琉斗君が生まれてからは「一日が終わる頃にはもうヘトヘトで、自分の時間がほとんどとれない。でも、2人ともあのままサラリーマン生活だったらこんな風に子育ては楽しめなかったかな」と、笑顔を見せた。 子どもが生まれて、「ますますがんばらなきゃ」と話す優さんだが、淡々とした話しぶりに気負いは感じられない。今後の不安は、と問うと、しばらく考えた後こう語った。 「確かに、何か約束されてこっちにきたわけじゃないから、先が見えないことは不安と言えば不安かな。でも、不安は感じようと思ったらどこにいても何をしていても感じられるもの。目の前のことを一個一個やって、そこからくる結果を受け止めるしかないのかな」
まだ始まったばかりのサトヤマカンパニー。「味噌は毎日買うものではない」(優さん)ため、販路の拡大や売上高を伸ばすことが当面の目標だ。販売と並行して、前田さん夫妻は味噌作りの過程を若者や子育て世代などに体験してもらう活動も行っており、12月には地元の小学生約30人が味噌作りの現場を訪れた。
これまでに開催した体験会がきっかけで、海外からも参加したいという問い合わせがあった。 認知度の向上や販路の拡大を図りたい優さん。 「いずれはウェブサイトを日英の二か国語仕様にしたいな」と語った。