途絶えかけた伝統「救出」事例も 「地域おこし協力隊」開始10年
2018年時点、協力隊員として活動する人は20代、30代が7割を占め、総務省の担当者も「『よそ者』の若者が地域に入って定着している様子がうかがえる」と語った。
職保障なしも、6割が任期後に定住
地方への移住を考える際の入り口として一定の市民権を得た感がある制度だが、任期終了後の就業先は保障されていない。都市部に比べると働き口が少ない移住先で引き続き暮らしていくことは、卒業後の隊員にとって大きなハードルとなる。 協力隊の任期終了後の定住状況についての調査結果(2018年度公表)によると、「活動地と同一市町村に定住」と「活動地の近隣市町村内に定住」を合わせた合計は全体の約6割。 受け入れ自治体別に見ると定住者率は30%台から100%までばらつきがあり、地域による差異も見られる。協力隊終了後も地域で住み続けられるサポートがあるか、収入が得られる見通しがあるかという二つの点が定住につながるかどうかの鍵となるという。
サイト立ち上げ、麦味噌の販路拡大へ
浜崎さんから麦味噌作りを受け継ぐこととなった前出の前田優さんは、2011年の東日本大震災後、首都圏で食品などの流通がストップし、商品棚が空っぽになった様を強烈に覚えている。自分たちが日常的に口にしている食べ物が一体どこから来ているのか、何が入っているのか、ほとんど知らないままの暮らしに強い危機感を覚えた。「もっと地に足の着いた生活」を求めて、当時婚約者だった夫の道範さんと共に地方 への移住を決意した。
前田夫妻の移住決断に至るまでの過程については、2018年2月8日配信の記事「外資IT職から『味噌づくりの伝承者」に 熊本に移住した夫妻の決断」をご覧いただきたい。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00000008-wordleaf-soci&p=1 2人は協力隊を卒業後も荒尾市に残ることを決めた。今年の2月には長男の琉斗(りゅうと)君が誕生。10月には「サトヤマカンパニー」の屋号でウェブサイトを立ち上げ、夫妻で作った折敷田味噌や無農薬の米などをインターネット販売している。優さんは語る。 「里山は、人間と生き物が共存している代表的な場所だと思うから、サトヤマカンパニーと名付けました。共に暮らすことと、サステイナブル(持続可能)がコンセプトです」