部活は「贅沢」?有期雇用契約パートのシングルマザーが直面する「体験格差」
「部活はいいぞ! いろんな経験ができるからな」 これは、TBSの日曜劇場『下剋上球児』で鈴木亮平さんが演じる主人公南雲が教師として学生に伝える言葉だ。 しかし、部活をやりたくてもできない子どもたちがいる。 【写真】貧困で食べ物がない…子どもたちのリアルな声 子どもの困窮について調査・提言も行っている認定NPOキッズドアが困窮子育て家庭に対して行った2023年11月のアンケート調査によれば、物価高などによって生活がさらに苦しくなった家庭の55%が「学校外の学びの機会を減らした」と答え、11%が部活を辞めたという。 こんな「体験格差」が現在の貧困の象徴だということを可視化したのが今井悠介さんの『体験格差』(講談社現代新書)である。 本書から抜粋して送る第4回は、公務員として1年の有期契約パートで働くシングルマザーの方のインタビューをお届けしている。 前編では、小学生の女の子と男の子のいる小西尚子さんの仕事の状況や、任天堂Switchも買えず、子どもが友達から「お金ないの?」と聞かれたショックな出来事をお伝えした。小西さんは、かつて正社員だったこともあったが、週5日勤務の事務で手取りは15万円だった。しかもかなりのパワハラに遭い、現在の仕事についている。現在の仕事は公務員的な仕事だが、有期雇用のパートで、毎月の手取りは15万円ほど。そこにボーナスも出るというが、毎年契約更新のためには新しく応募してきた人とともに面接を受けなければならないという。 後編では子どもたちがやりたいと思うことをやらせてあげられない現状を伝える。
買えるものが少ない日もある
──1年契約だということ、職場の人数もどんどん減ってきていること、そして毎年、既存のメンバーと外から応募してきた人が一緒に集団面接を受け、そこで受からないと次の年は続けられないとおっしゃっていました。面接も過酷ですし、契約も短期で不安定ですね。来年どうなるかもわからない。物価も上がっていますよね。 「すごく高いですよね。例えば今日は牛乳がこんなに高いんだ、じゃあ買うのやめようって、買えるものがすごい少ない日もありますね。そういうことが続くと家に食べ物がなくなってしまって。 フードバンクみたいなものもたまに利用しています。子どもたちと一緒に行くんですけど、『友達に言ってもわからないから言わないようにね』って言ったりして。 ただ、今の仕事になって忙しくなってからは、毎日をこなすことが精一杯で、節約とかもあんまり考えられなくなってしまって。これはこっちの安いお店に買いに行ってとか、そういう体力がもう残っていなくて。少しは稼いでいるから、ちょっと高いなと思いつつ買ったりすることもあります。 仕事からの帰りで運転しているときに、道が混んでいるとイライラしてくるんです。子どもたちがおなか空いてるだろうなとかって考えて。早く帰らないとって」 ──仕事の収入以外に行政からの手当などは受けていますか。 「児童扶養手当があります。前は全部支給だったんですけど、今の仕事になってから一部支給になりました。 あとは児童手当で、『児童手当は全部進学のために貯金したほうがいい』と本で読んだので、貯金に回しています。本の情報ばっかりで……。ほかの家がどんな感じかわからないんですけど、ほかの家と同じくらいは貯めたいです。多分無理だけど……」