「紀州のドン・ファン事件」須藤早貴被告は無罪に…検察が控訴できないこれだけの理由(城下尊之/芸能ジャーナリスト)
【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】 “紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家、野崎幸助さんが2018年に自宅2階で死亡した件で、新婚の妻だった須藤早貴被告が殺人容疑で裁判となっていたが、今月12日、和歌山地裁で無罪判決が出された。 児童相談所から長女を奪い返した両親に有罪判決…実の子供でも“連れ去り”は犯罪行為 無罪が言い渡された瞬間、検察側は法廷で茫然自失といった表情だったと言われている。 僕はこのコラムで複数回、早貴被告が「野崎さんが自分で覚醒剤をのんだ」と主張すれば無罪になるのではないかと伝えてきた。今回の判決は状況証拠しかない中で、司法が「疑わしきは罰せず」という大原則にのっとった至極まっとうな判断をしたと思っている。もちろん、それが「正しい」とは言いにくいのだが……。 新聞各紙やワイドショーに登場する弁護士などの大方の見方は、検察側は控訴すると見ている。検察も意地があるのでそうするだろうが、実は非常に難しい判断だ。 今回の判決の“キモ”は2つ。ひとつは、野崎さんが死を意図して間違った分量の覚醒剤を自分でのんだという可能性を否定できない点。もうひとつは、起訴状に「早貴被告が何らかの方法で覚醒剤を野崎さんに摂取させた」と書かれているが、その方法がこれだけ時間をかけたにもかかわらず分からないという点(覚醒剤は苦みが強烈で食事に混ぜたらすぐ気づく)。 そこで検察側は「野崎さんが亡くなった日はふたりだけだった時間が長かった」「1階から2階に上がったり下りたりした回数が多かった」「早貴被告が覚醒剤を入手した(売人2人のうち1人が否定)」「完全犯罪などに関する検索履歴があった」などの状況証拠を積み重ねたが、それはあくまで間接的に犯罪を推認させる証拠で、犯罪を直接証明するものではない。 検察が控訴するなら判決の翌日から2週間以内の手続きが必要だ。その際、①「野崎さんが自分で覚醒剤をのんでいないことを証明する」、②「早貴被告がのませた方法を確定し、それ以外にのんだ可能性がないことを証明する」ことが必要になってくる。最低でもどちらか1つを証明できれば控訴できるが、今さらそれができるのなら1審で明らかにしているはずで、ほぼ不可能だろう。 となると……、1審の判断は間違いだと主張するしかない(裁判官が代われば別の判断になるかも)。 もっとも、この状態で再度、無罪判決が出たら検察(上級庁含め)は大恥をかくことになる。直接証拠を出せず、自白も取れなかった検察の敗北だと思う。 (城下尊之/芸能ジャーナリスト)