深夜、顧客企業からクレーム電話! 「大失敗の原因は自分なのに...」無言の先輩、叱られなかったのはなぜか
上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか? 実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。 今回は、若手社員が失敗から学び、リーダーへと成長することを支えてくれた先輩たちとのエピソードです。 ■深夜のミス発覚!...若手時代の苦い失敗体験 ITシステム導入・保守サービス事業をグローバル展開する企業に勤務する、30代半ばのMさん。約20人のチームを束ねるITコンサルタント・リーダーとして、チームメンバーからも、顧客企業からも大きな信頼を得て活躍中です。 ところが、そんなMさんも若手の頃は大きな失敗を何度か経験し、先輩に窮地を助けられたことが印象に残っているといいます。また、数年前にチームリーダーに抜擢された時も、しばらくは大ベテランの年上部下に助けられながら、何とか大過に至らず仕事を回せてきたのだとも...。 今回は、Mさんがリーダーへと成長する過程を心強く支えてくれた、2人の「先輩力」に着目します。 Mさんにとって、一番印象に残っている失敗談とは――。 Mさんが新卒のSEとして入社して2年目の、システム開発の仕事にも一通り慣れてきた頃。お得意先だった大手顧客企業から、複数の国の支店に新しく導入する事業用ITシステム開発のプログラミングの一部を任されました。 複数の言語を取り込んだ書類発行システムを開発して、無事納期までに納品。顧客先企業での本格稼働日を迎え、相談の連絡が入ることも想定し、念のため一部チームメンバーが社内で待機していました。すると、夜の9時過ぎに顧客から連絡が入り、何と納品システムにトラブルが発生したとのこと...。
先輩コンサルタントの迅速なフォローのおかげで
当時、Mさんの立場はプログラマーで、顧客先企業とのやり取りの窓口は、チームの先輩でITコンサルタントのKさん。お客様からの問い合わせにKさんが出ると、「海外支店で必要書類をアウトプットしようとしても正常に出てこない。どういうことか?」とのこと。 不具合の原因を調べたところ、設計ミスとテストでの確認漏れ。直接プログラミングとテストにあたったのはMさん。先輩のKさんは、相手方に何度か連絡を取り、ミスの原因を説明し、早期修復を約束しました。そして、KさんはMさんに一言。 「明日の朝、謝罪に行くので、あなたも同行して」(Kさん) 「はい。申し訳ありませんでした!」(Mさん) Mさんは、頭を下げてそう答えるのが精いっぱいでした。 その後、深夜にかけて急いでプログラム・ミスを修復。翌朝早々、KさんはMさんを連れてお客様のところへ謝罪に向かったのです。 Mさんは、ミスの発覚から、Kさんのお客様とのやり取り、修復作業から謝罪同行に至るまで、自分のミスが悔しく、生きた心地もしませんでした。それでもKさんの迅速な対応で、お客様先でシステムも滞りなく動くようになり、何とか穏便に収まったのです。