次世代ハイブリッド基幹ユニット専用工場に見る、スバルの競争力の源泉
SUBARU(スバル)の群馬製作所北本工場(埼玉県北本市)は、次世代ハイブリッドシステム「ストロングハイブリッド」の基幹ユニットである「トランスアクスル」の専用工場だ。地域と共存し従業員の働きがいを高めることで、顧客に愛される商品を供給する。ダイバーシティー(多様性)をはじめ、デジタル変革(DX)や物流などモノづくりの革新を推進。今後計画する国内工場再編のモデル工場として技術を発信していく。(編集委員・村上毅) 【写真】スバルの北本工場 北本工場は2024年10月末にトランスアクスルの生産を開始した。工場の延べ床面積は6万4430平方メートル。1階がケースなどの加工エリア、2階が組み立てエリアで構成する。従業員は12月1日時点で256人。かつて汎用エンジンなどを生産した既存の工場建屋を有効活用し、新開発のトランスアクスルの生産拠点として一から整備した。 生産性や品質向上に向けて取り組むのがDXだ。IoT(モノのインターネット)を活用し、生産性や品質情報を常時自動で収集。現場の「見える化」により異常の発生を未然に防止するほか「“カン・コツ”に頼らないでライン管理を実現する」(佐伯一哉北本工場長)考えだ。 例えば製造品質管理システム「Resume」では、製造における品質履歴を車番や仕様、ライン通過時間とひも付けして一元管理。手作業でデータを収集・分析していた時間を効率化し、他業務に充てる。 商品力の向上ではロボットの活用を進める。トランスアクスルは静粛性を確保するためギアやモーターの振動抑制がカギを握る。ロボットが位置決めし、組み立てることでバラつきを最小化した。組み立てたトランスアクスルは3次元(3D)計測で全数を保証している。 トラック運転手の時間外労働の上限規制適用に伴う「物流の2024年問題」が課題となる中、物流効率化などを主眼とした「ホワイト物流」の取り組みもテーマの一つだ。自動車メーカーでは初めて、トラックドライバーによる自主荷役を廃止。ドライバーが担っていたトラックの荷役と構内搬入を工場側で実施する。「ドライバーの働きやすい環境」(佐伯工場長)を整えることでドライバー人材の確保につなげる。 スバルは26年までに電気自動車(EV)4車種を投入。大泉新工場(群馬県大泉町)を整備する計画もある。ストロングハイブリッドの円滑な立ち上げはEV移行の必要条件で、新技術は新たな生産基盤となる。福水良太常務執行役員モノづくり本部長は「北本工場は世界最先端のモノづくりを目指す“先頭バッター”。新工場につなげる」と意気込む。