7割以上が敗訴…「医療訴訟」は患者側が負けやすいワケ【中央大学法学部教授が解説】
もし購入した製品に問題があったら…
さて、次に製造物事故の世界を覗いてみましょう。 私たちは、日頃から、さまざまな物を購入して、生活を成り立たせています。パソコン、自動車、お弁当、洋服、おもちゃなど……。そして、そこにはもはや、「自分自身で作る」という選択肢が、ほぼありません。要は、今の社会では、作り手と受け手が分化しているのです。すなわち、消費者が、みずからリスクをコントロールできないことを意味します。 では、その商品に欠陥があって、事故が生じた場合はどうなるのでしょうか。いきなりドライヤーから火が出て火傷をしたり、お昼に食べたお弁当で食中毒になったり、乗っていた車のブレーキがまったく利かずに事故を起こしたり、化粧水を使ったら肌が変色してしまったり……。 このような事故は、消費者が避けようと思っても避けることが難しい事故なのです。しかも、消費者という小さな存在が、製造業者という大きな存在を相手に責任追及をしていかなければなりません。それは、ちょうど、ゴリアテに挑むダビデ※2のようです。 そんなダビデ(=消費者)の武器になるものが、製造物責任法という法律です。この法律によれば、製造業者が製造した物の「欠陥」によって、生命・身体などに損害が生じた場合には、過失の有無にかかわりなく、製造業者は損害賠償責任を負うというものです(製造物責任法3条※3)。一種の無過失責任といってよいと思います。 ※2 小さな羊飼いのダビデが屈強な巨人ゴリアテを打ち倒す、『旧約聖書』の有名な決闘の物語。「強者に立ち向かう弱者」の比喩。 ※3 【製造物責任法3条】製造業者等は、その製造、加工、輸入又は(中略)氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
【関連記事】
- 恐ろしい…近年「遺骨をサービスエリアのごみ箱に捨てる人」が増えているワケ【中央大学法学部教授が解説】
- 「親が亡くなったら、真っ先にコンビニへ走る」が新常識!相続手続きで困らないためにやるべき、たった一つのこと【税理士が解説】
- 婚約者が「19歳男子学生」とママ活。慰謝料「100万円」を請求も…2人へ〈W請求〉は可能?“実際の慰謝料相場”は【弁護士が解説】
- 加害者「“物損”なんだから、大した怪我ではないはず」→「慰謝料減額」に…!?交通事故の際〈人身〉で届け出なかった場合に“起こり得る事態”【弁護士が解説】
- 公道を走行する「違法電動アシスト自転車」…もし事故が起きたら「被害者の救済」が不十分になるおそれも