7割以上が敗訴…「医療訴訟」は患者側が負けやすいワケ【中央大学法学部教授が解説】
「欠陥」のいろいろ
製造物責任法上の「欠陥」には、大きく、製造上の欠陥、設計上の欠陥、指示・警告上の欠陥があります。 まず、製造上の欠陥とは、製造物が設計・仕様どおりに作られなかったことによって安全性を欠く場合の欠陥です。製造工程における製品の安全に着目する点に特徴があります。たとえば、異物混入などがこれに該当します。 また、設計上の欠陥とは、設計・仕様自体が安全性を欠いている場合を指します。設計を変更しない限り、その設計に従って製造された製造物すべてに欠陥があることになります。これは、製造業者にとっては厄介です。 「訴訟※4」という映画があります。主演は、ジーン・ハックマン。自動車事故で家族を失い、自分自身も下半身麻痺となったクライアントのために、市民派弁護士が、最大手の自動車会社アルゴ・モータースを相手に戦いを挑むのです。 そしてそこには、企業ぐるみのリコール隠しがあります。日本でも、過去に大手自動車会社の大規模なリコール隠し事件がありました。設計上の欠陥を隠した事例といえます。 さらに、指示・警告上の欠陥とは、製造物に残存する事故発生のリスクを防止するのに足りる適切な指示および警告がなされていない場合をいいます。指示・警告とは、たとえば、薬の能書きや、おもちゃの注意書き、タバコの健康被害表示などです。「副作用が出たら直ちに服用を中止してください」、「3歳未満は使用禁止」、「吸いすぎに注意しましょう」。いずれもよく見かけるものですね。 ※4 1991年公開のアメリカ映画。マイケル・アプテッド監督。敵味方に分かれた父娘の弁護士が争う法廷ドラマ。 遠藤 研一郎 中央大学法学部 教授
遠藤 研一郎
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