箱根駅伝2025 全日本8区で衝撃の走りを見せた駒澤大・山川拓馬 5区出走となれば「山の神」争いのトップ候補
【強者揃いの山上り決戦への決意】 雪辱を誓う今回の箱根駅伝、山川は「希望区間は2区か5区です」と話していた。一方、藤田監督は、12月上旬の箱根駅伝トークバトルで「全日本の走りを見ると、2区をやらせてみたいという思いもあります」と、エース区間の2区での山川の起用を示唆していた。1年時に区間4位と好走した5区か、それとも花の2区か。山川をどの区間に起用するのかは、駒大の王座奪還へのカギのひとつだ。 結局、12月29日の区間エントリーでは、山川は補欠に登録された。まだいずれの区間の可能性も残すが、2区にはエースで主将の篠原倖太朗(4年)の名前がある。おそらくは篠原にアクシデントがあった場合のバックアップも兼ねての補欠登録であり、何事もない限りは、当日変更で5区起用が濃厚だ。 上りを得意とする選手だけに、2区の権太坂と残り3kmからの急坂をすいすいと攻略する山川も見てみたいが、2区以上に1区間でタイム差がつきやすい5区・山上りのほうが、山川の走りは生きてくるはずだ。なおかつ、前々回の経験があり、計算がしやすいのも5区に起用するアドバンテージだ。 12月13日に行なわれた合同取材では、山川は「2区か5区」と言いつつも、やはり5区への思いが強いように感じた。アンケートの希望区間にもしっかり"5区"と書いてあり、「1年生のときのリベンジと、山の神になりたい」と意気込んでいる。 2回目の5区を走るイメージもできている。 「1年生の時に走った時は、"上りで詰めて、下りで離す"っていうレースをしたんですけど、今回5区を走る場合は、逆に"前半で離すような走り"をしたい」と、2年前とは違ったレースを目論む。 5区での目標は68分台の区間新記録を掲げる。 とはいえ、今回の5区は、山川のほかにもなかなかの強者ぞろいだ。 青学大は、10000m27分台に突入した若林宏樹がエントリーされた。大学で競技に区切りを付けるだけに、最後の箱根駅伝への思い入れも強い。 早稲田大の工藤慎作(2年)は、出雲の6区で駒大の篠原や青学大の太田蒼生(4年)を上回る区間2位。全日本でも、山川の1分遅れだが、区間3位と立て続けに好走しており、走力は昨季以上だ。 また、現時点では補欠登録だが、城西大の斎藤将也(3年)、創価大の吉田響(4年)も5区出走の可能性が高い。 「同じ区間を走る選手全員がライバル。そのなかでも、しっかりと区間賞、区間新を狙って走ることが大事」と山川は話しているが、他大学の意識する選手には、10000m27分台を持つ城西大の斎藤の名前を挙げている。 これほどの実力者たちに圧倒的な差をつけて勝利し、"山の神"と呼ばれるような活躍を山川が見せたとき、駒澤大の2年ぶりの優勝も見えてくる。
和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi