ダニエル太郎が日本男子テニスにもたらした可能性
東京・有明コロシアムにチェコを迎えて戦われたデビスカップ準々決勝。初日シングルス2試合と2日目のダブルスに敗れた日本は、最終日を待たず敗退となった。最終日の消化試合でも勝てず結局0勝5敗に終わったが、錦織圭をケガで欠く布陣では無理もない。相手のチェコも世界5位のエース、トマーシュ・ベルディヒが欠場したものの、40位、47位、67位、とトップ100を3人揃える強豪だった。しかし、ナンバー2の添田豪までもが発熱など体調不良でコートに立てなかった日本チームの敗因は、相手云々という話ではなかった。 植田実監督は、「ナンバーワンとナンバー2を欠いたことで、チームの士気は落ちがちだった」と認める。ただ、重なった不運の中でもぎ取った収穫があるとしたら、新加入のダニエル太郎が見せた可能性だったのではないだろうか。 ダニエル太郎という名を聞いて、咄嗟にお笑い芸人だろうかなどと想像する人の数も今ではすっかり減ったに違いない。2月にチリのATPツアー大会で予選から本戦のベスト8まで進んだ21歳は、日本でも大きく報じられた。アメリカ人の父を持つハーフで、生まれはニューヨーク。13歳からスペインのバレンシアを拠点にしているというインターナショナルな生い立ちに加え、190センチの長身にハーフらしい端正な顔立ちというルックスも、話題性を広めた。 そんなダニエルにチームからお呼びがかかったのは、錦織が左脚付け根のケガで出場が危ぶまれてすぐのこと。デ杯初日まですでに1週間を切っていた。ダニエルにデ杯経験はなく、世界ランキングも日本の中で6番手の190位だが、彼の持つ〈旬〉の勢いとフレッシュさに、実力以上の影響力を期待した監督の気持ちはよくわかる。 実際、実戦では初めてとなる有明のセンターコートで予想以上の戦いぶりを見せた。初日第2試合、一昨年のウィンブルドンでラファエル・ナダルを破った世界40位のルカシュ・ロソルを相手に、2セットダウンから2セットオールに追いつく大健闘。時速200キロを超えるビッグサーブに食らいつき、ひとたびラリー戦に持ち込めば、本場スペインのクレー仕込みのしぶといテニスが光った。