【学生長距離Close-upインタビュー】エースに成長した亜細亜大・片川祐大「箱根はやっぱり走りたい舞台」
逆境がターニングポイントに
ただ、そんな逆境が片川にとってのターニングポイントになった。 「緊急事態宣言が出て、一人でやらないといけない時も故障していたのですが、どうしてか分からないんですけど、少しずつ故障をしなくなりました」 練習が継続してできるようになると、9月の5000mの記録会では自己記録を一気に30秒以上更新する14分34秒21。初めて15分切りを果たし、その記録会ではチームトップにもなった。 初めて駅伝のメンバーを勝ち取ると、兵庫県大会の4区で2位。12月には5000mで14分26秒95まで記録を伸ばした。 「陸上を本気でやるなら、関東の方が強い選手が集まる。関東で勝ってこそ、やりがいも出てくる」 高校の恩師・平山征志先生がこう話していたこともあって、片川は関東の大学を志すようになった。一度は諦めかけた陸上の道だったが、両親に頭を下げて、大学で競技を続ける許しを得た。 「学業と競技を両立できるところを考えて」指定校推薦で亜細亜大への進学を決めた。大学の同期はもちろんスポーツ推薦で入学した選手ばかり。入寮するにあたっては佐藤信之監督に直接電話をして許可を得たという。 「授業料免除もないですし、両親には周囲以上に負担をかけている。それでも送り出してもらったので、関東まで来て適当に陸上をやるなんてことはありえない。そう思っているので、自分に厳しくできていると思います」 覚悟を決めた片川は大学でも成長曲線を描き続けた。ハーフマラソン(1時間2分6秒)、20km(58分48秒)の亜細亜大記録、5000m(13分41秒72)と10000m(28分11秒20)の亜細亜大日本人最高記録を持つチームのエースとなった。 現在は、佐々木悟コーチに練習メニューを組んでもらい、一人で練習を行うことが多いという。スピード型の留学生、ジョンソン・モゲニ(2年)とも別メニュー。「8割、9割の力でひたすら練習をこなしていくのが自分に合っている」と言い、じっくりと土台を固めてきたことが好記録につながっている。