エアレース王者の室屋義秀は連覇秘訣を永世7冠・羽生に学ぶ
「新しいシーズンをゼロベースで考えたい。ライバルはいるが、チームは強いし、能力が高まっているので有利だと思う。ただ去年のトロフィーは何の役にも立たない。だから何も考えない。守るより攻めろ? それがキーだと思う。日本人には、将棋の羽生さんのように勝ち続けている人がいる。ここから先は、そういう手本となる人に習っていく必要があると考えている」 永世7冠となり国民栄誉賞に輝いた将棋界の羽生善治竜王の著書を読み、その哲学を参考にしている。 「羽生さんの本を読んでみると、過去に勝ったことなどは関係ないと、書かれている。常に前へいく人が連戦連勝して、その世界の殿堂入りするような結果に結びつけている。そう考えると、連覇って考える必要もないのかなあと思えてくる。チャンピオンシップは、天候や運にも左右されるし、どんなに強くとも勝てないこともある。去年は最後までもつれた。結果にはこだわらずに能力を上げていけば、最後には総合力の強いチームが勝つ。そこへ向けてひとつひとつの課題をこなしていくだけ」 すでに連覇へ向けて「チーム義」は動き始めている。 そのひとつが愛機「EDGE540 V3」のチューンナップだ。 昨年は欧州転戦中に機体のフレームにヒビが入るアクシデントが起き、応急処置をしながら、シーズンを乗り切ったが、インディアナポリス大会が終わると、すぐにカリフォルニアの基地に機体を運び、「一度、全部をバラバラにして」の徹底メンテナンス作業を進めた。チームのテクニシャンにも「経験豊富な」ピーター・ゴーディエ氏という新しい人材を加えた。 2月2日開幕のアブダビ大会には間に合わないが、4月21、22日の第2戦となるフランス・カンヌ大会からは、エンジンを覆うカウリングに改良を加えたものを投入予定。レース機は、空冷式だからカウリングを改良することで、空気抵抗が減り、エンジンの冷却がより効率化して「直線もコーナーからの加速もよくなる」(室屋)との効果が期待できるという。 さらに、この2年懸念だった両翼の端につけて旋回性を高める小さな翼の「ウイングレット」も今シーズンは、どこかのタイミングで投入する構想がある。 「どこも開発競争が激しい。毎年1秒縮まっているから」 羽生流の“前を向き続ける”との姿勢だ。