冬の屋外で2時間謝罪、車で轢かれそうに…“想像以上にヤバイ”現場のカスハラの実態と今後
面接時や就労時に気をつけたいこと
カスハラ政策をおこなううえで、アンケート調査の集計など大学の教授などと連携することも多いという波岸氏は、スーパーなどの小売店や飲食店などでアルバイトをすることも多い大学生たちのリアルについても話してくれた。 「アルバイトを通じてカスハラ体験をした学生さんたちもいて、アルバイトをするときや就活のときなど働きだしてからのことを考え、カスハラに対して敏感になったり非常に怖いと感じたりしているようです。そのため就業前に不安を解消しておくには、面接へ行く前に対象企業のホームページなどでカスハラに対してどのような指針を示しているのかをチェックしたり、面接時に質問をして確認したりすることも大切でしょう」 面接時や就業時は「働かせてもらえなくなるかも」「働きにくくなるかもしれない」という気持ちから確認や相談しづらいと考える人もいると思うが、「働き手である私たちがアクションを起こすことも企業にカスハラを意識してもらうことにつながる」と波岸氏。 「また、働いているときにカスハラ行為に遭遇したときは、さらなる大きなトラブルへの発展につながらないよう、ひとりで解決しないということも大切です。すぐに職場の人に相談し、謝罪などへ行く場合にも同僚や上司などと向かうようにするといいでしょう。2人以上での行動が難しい場合は“どこへ何をしに行くのか”、“帰りの予定時間は何時頃になるのか”などを職場と共有し、事前に決めておいた時間までに連絡がない場合は職場のほうから謝罪などへ行った従業員に電話するよう話し合ったりしておくのも有効です」
企業が対策をするメリットと「いま」の理由
セクハラやパワハラ、そして今度はカスハラについての対応を求められている企業にとって、対策にかかる費用や人員は頭の痛い問題だろう。それでも、「カスハラ対策は企業側にとってもメリットがあり、多くの企業が準備中のいまがチャンス」だと波岸氏は話す。 「小売業界は、人手不足です。そのようななかでカスハラ対策を講じていない企業は、必然的に働き手に選ばれなくなってしまいます。働く人に選んでもらえる企業になるためにも、カスハラに対してきちんとした指針があることは非常に大切だと言えるでしょう。さらに現場環境としては、カスハラに関してのポスターを貼ったり相談できる窓口を設置したり、普段から何でも言い合える風通しのよい状態にしておくことも大事です。はっきりとしたデータはありませんが、顧客から受けた嫌な体験を従業員同士が話すことで気持ちが楽になったという話も聞いたことがあります」 また、「決定した指針は社内で共有するだけでなく、社外に向けてプレスリリースすることも大切」だと言う。世の中に向けて公表することで、「この企業は、こういった取り組みをしているのか」と知ってもらうことができ、働き手にも選ばれやすくなるからだ。 「あとは、カスハラへの指針を固める時期や公表するタイミングも大切です。早い段階で公表することで世間に注目されやすく、『この企業は早い段階で、カスハラに対してきちんとした取り組みをしている』『働きやすそうな会社』など、よい評価にもつながりやすくなります。カスハラへの指針を公表する企業が増えてからでは、何の意味もない。公表のタイミングは、まさに “いま”なのです」 ルールを決めて公にしなければ人と接するのも難しくなったことは、とても残念といえる。このような状況を踏まえ、「こういった言動は相手を嫌な気持ちにさせるかもしれない」と各々が想像力を膨らませ、誰もが気持ちよく過ごせる社会にしていきたいものだ。 <取材・文/山内良子> 【山内良子】 フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
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