死刑制度を考える懇話会発足 「廃止・存続どちらがベターなのか」前検事総長ら発言
日本における死刑制度のあり方を議論するため、映画監督の坂上香さん、前検事総長の林眞琴さんをはじめ学者、ジャーナリスト、国会議員ら16人が委員となった「日本の死刑制度について考える懇話会」が2月29日に発足した。死刑制度の廃止と、死刑に代わる刑罰の提案をしてきた日本弁護士連合会(日弁連)が呼びかけて誕生したもので、日弁連が事務局を務める。今秋には関係諸機関に対して提言を伝える予定だ。
日本の死刑制度をめぐっては、かつて民主党政権が「死刑の在り方についての勉強会」を法務省内に発足させ、2012年3月には報告書をまとめたが、国民的な議論にはつながらなかった。 初会合となった2月29日は委員たちが自己紹介。死刑制度のあり方について、自分がどのように考えているかを率直に述べた委員もいた。筆者がとりわけ強い印象を覚えたものとして、紙幅の事情から坂上さんと林さんの2人の発言を紹介したい。
「廃止してからがスタート」
坂上さんは、自分の経験を次のように語った。 「日本で取材をしていくうちに出会った死刑囚と、番組は作らなかったものの、20年余り個人的に面会を続けました。死刑囚と死刑囚の家族と付き合う中で、死刑制度は被害者遺族に対しても何の問題の解決にもつながらず、死刑囚の家族にとっても大きな負担になるということを実感しました」 さらに、こう続けた。 「その中で私自身は『死刑というのは廃止して終わりではない。むしろ死刑を廃止してからがスタートなんだ』と(考えた)。加害者に対して社会はどのような働きかけをしていくのか。被害者に対してどのような回復支援をしていくのか。日本には本当に被害者に対して冷たい制度があり、社会があると実感してきた。そのことを踏まえてこの懇話会に参加したい」 一方、一昨年6月まで検事総長だった林さんは、まずフランスの死刑廃止に至る経緯を挙げ「国民の調査でも当時、存続の方が多かったが、廃止になったのは政治的なイニシアチブによるものだった。国民の選挙によって、政策の選択によって、死刑が廃止された」と説明。そのうえで「私は、死刑を廃止すべきだという『マスト(絶対にやらなくてはならない)の議論』ではなく、今後の日本にとって死刑制度を存置したままの方がいいのか、あるいは見直しを加えた方がよいのか、どちらがベターなのか。こういった観点での議論に参加したい」と述べ、政策の選択として判断すべきだという自分の考えを強調した。