国スポ、今度はもてなす番 元Vリーグ東レ・野呂加南子さん(24)、故郷・青森県つがる市の市職員に
昨年までバレーボールVリーグ女子1部・東レアローズ(滋賀県、現・東レアローズバレーボールクラブ滋賀)の選手として活躍した青森県つがる市出身の野呂加南子さん(24)が本年度から、市役所の任期付き職員として2年後に青森県で開かれる国民スポーツ大会の関連業務に励んでいる。東京の強豪高校時代などに出場した国民体育大会の経験と開催地での思い出を胸に、今度は自分が各地の選手団を温かくもてなしたい-と心に決めている。 野呂さんは同市の穂波小2年生からバレーを始め、6年生の時に地元のクラブチームの一員として全国大会3位を経験。稲垣中を経て下北沢成徳高校(東京)に進み、アウトサイドヒッターとして全国高校総合体育大会と国体の優勝に貢献した。3年生の時、東レからスカウトを受け「好きなことをしながら仕事できる」と入団を決めた。 東レに入った2019年4月から、常に結果が求められる世界で高校時代以上の重圧と向き合う日々が続いた。それでも、時間を問わず練習できる環境で競技に専念できたこと、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)し合った時間は財産になったという。スパイク専門のポジション「オポジット」にも挑戦し、シーズン準優勝も経験。ただ「高校日本一の目標やバレーの選手になる夢をかなえ、ある程度のことは達成できた」として、23年5月に引退した。 程なくつがる市の実家に戻り、車の免許を取ったり友人と遊んだりして時間を過ごした。冬になり、市が国スポ関連業務の任期付き職員を募集していることを知った。同市はバレーと柔道の会場に決まっている。過去に5回出場した国体の経験を生かしたいとの気持ちが芽生えた。 採用試験受験の決め手となったことがもう一つある。愛媛県開催の国体に出場した高校2年の時の思い出だ。チームは受け入れ先の同県鬼北町で地元住民の歓迎を受けた。朝も夜も手料理が振る舞われ、宿泊先の民家では夫婦が温かく迎えてくれた。5日間ほど過ごして町を離れる際、多くの住民が見送りに来てくれた。 それまでの人生で縁がなかった人たちの心の底からのおもてなしに、たまらず涙があふれたという。「今度は自分が故郷で、全国から来る選手を温かく迎えたい」。そんな思いで試験を受け、合格をつかんだ。 今年4月、市生涯学習交流センター・松の館の国スポ・障スポ推進室で仕事が始まった。最初はパソコンでの事務作業、電話対応に苦労したが、今は慣れた。秋には市職員の採用試験を受けて合格。来春からは正職員になる。「地元の国スポに関われることがうれしい。『つがる市、青森県って温かいな』と思ってもらえるようにしていきたい」と意気込む。 自らも成年女子の一員として2年後の国スポへの出場も決めている。「小さい頃からお世話になってきた地元の関係者の方々がいる。(プレーの面でも)恩返しできれば」