「梅毒」に感染した妊婦 2023年は383人と過去最多、都心部の20代前半に顕著
2023年に性感染症の梅毒と診断された妊婦が383人(速報値)と、統計を開始した2019年以降で最も多くなったことが国立感染症研究所によって明かされました。このニュースについて佐藤医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
国立感染症研究所が発表した内容とは?
編集部: 国立感染症研究所が発表した内容について教えてください。 佐藤先生: 国立感染症研究所が実施した梅毒に関する調査によると、2023年に梅毒と診断された妊婦は速報値で383人となっており、現在の調査方法を開始した1999年以降で最多の患者数となりました。国立感染症研究所は「患者数の増加に伴って、妊婦が梅毒に感染する件数も増加している」と指摘しています。 梅毒に感染した妊婦の統計は2019年から取られており、2019年は208人、2020年は185人、2021年は187人と、概ね200人前後で推移していました。しかし、2022年は267人、2023年は383人と増加傾向にあり、それぞれ前年の1.4倍に増えていました。また、2021年以降に女性の梅毒患者数が大幅に増加していた中、2023年は妊婦の梅毒患者数だけでなく、女性患者内での割合も増加していました。 都道府県別に状況を分析すると、2023年は東京都、大阪府、愛知県の順で妊婦の梅毒感染者が多くなりました。2022年は東京都、大阪府、福岡県の順番だったため、2年間を通じて東京都、大阪府が1位、2位となりました。 梅毒に感染した妊婦の5歳毎の年齢群別では、2022年、2023年ともに20~24歳の年齢群が最も多くを占め、非妊娠例でも概ね同様でした。
梅毒とは?
編集部: 今回取り上げる梅毒について教えてください。 佐藤先生: 梅毒は、他人の粘膜や皮膚と直接接触するなどの性的な接触などによって感染する病気です。「梅毒トレポネーマ」という病原菌が原因で、症状として出てくる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに病名が由来しています。 梅毒に感染したかどうかは、医師による診察と血液検査(抗体検査)で判断します。感染が明らかになったときの一般的な治療方法としては、外来で処方される抗菌薬の内服です。内服期間などはステージによって異なるので、医師が判断することになります。症状によっては、注射薬による治療や入院し点滴で抗菌薬の治療をおこなうこともあります。 梅毒は検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こし、死亡に至ることもあります。