観客3倍増の中で、なでしこリーグ再出発
なでしこジャパンが準優勝した女子W杯のために中断されていた、サッカーのなでしこリーグが12日に再開。全国各地で5試合が行われた。 前半戦を2位で折り返した日テレ・ベレーザは、年に一度開催してきた茨城・ひたちなか市総合運動公園陸上競技場でのホームゲームでASエルフェン埼玉と対戦。なでしこジャパンの主力を担ったDF有吉佐織、MF阪口夢穂が先発フル出場して、1対0の勝利に貢献した。 1800人収容のメインスタンドのみが開放されたなかで、詰めかけた観客数は競技場最高記録となる1503人。昨年の約700人から倍以上の伸びを記録していて、思い思いのユニフォームに身を包んだ子どもたちを含めた老若男女が声援を送り続けた。 通常の3倍強となる約70人を数えたメディアのなかには、ニュース番組に加えて情報番組のクルーも含まれていた。最後まで絶対にあきらめない戦いぶりを通じて、日本中に感銘を与えたなでしこたちに対する注目度の高さを物語っていたが、いわゆる「なでしこフィーバー」にわく光景は4年前と酷似している。 2010年の平均観客数が912人だったなでしこリーグは、女子W杯を制した2011年には3倍強の2796人に急増。ロンドン五輪が開催され、なでしこが銀メダルを獲得した2012年も2572人を記録した。 もっとも、フィーバーが収束に向かった2013年以降は平均観客数も下降の一途をたどり、今年の前半戦では1456人にまで落ち込んだ。こうした状況を受けて、キャプテンのMF宮間あや(岡山湯郷Belle)はアメリカ女子代表との決勝戦前日の記者会見でこんな言葉を残している。 「そこ(優勝の表彰台)に立ってこそ、女子サッカーがブームではなく文化になっていくスタートが切れると思っている」 一過性のブームではなく、文化として定着させるために。キャプテンが発したメッセージを、チームメイトはどのように受け止めているのか。 MVPの候補にもなるなど今大会のシンデレラとなった有吉、4年前の世界一にも貢献した阪口はくしくも同じ言葉を口にした。 「来ていただいたお客さんに、『また見に来たい』と思ってもらえるようなゲームを続けていくこと」 この日の埼玉戦では、ちょっとした異変があった。左腕にキャプテンマークを巻き、先頭で入場してきたのは有吉。本来のキャプテンで、なでしこの守備の要でもあるDF岩清水梓が累積警告による出場停止処分を受けていたため、人生で初めてとなる大役を託された。 ベレーザの森栄次監督は、副キャプテンの有吉か阪口のいずれかがキャプテンを務めるように指示した。しかし、2人はそろって恐れ多いと辞退。じゃんけんで雌雄を決することになったと、有吉が苦笑いしながら明かす。 「勝ったほうがキャプテンとなって、私がグーでミズホ(阪口)がチョキで。負けたミズホのほうが喜んでいましたね」