観客3倍増の中で、なでしこリーグ再出発
有吉はなでしこと逆の左サイドバックで、キックオフ早々にコーナーキックを獲得するなど、積極的な攻め上がりを幾度となく披露。阪口は前半はトップ下、後半途中からはボランチに回り、ピンチの芽を未然に摘み取る危機察知能力の高さと的確なパスさばきでチームにリズムをもたらした。 試合は前半32分にMF原菜摘子があげた先制ゴールを守り切る形となったが、シュート数ではベレーザが22対2と圧倒。ゴールバーに2度弾かれるなど、やや不運な場面もあった。果たして、ファンにまた見に来たいと思わせる90分間となったのか。自戒を込めて有吉が振り返る。 「個人的には正直きつかったし、なかなかゴールすることもできなかったけど、そこまでの崩しはよかったので、フィニッシュの質を上げていきたい」 ひたちなかには岩清水も帯同し、キックオフ前に有吉、阪口とともに女子W杯の準優勝をねぎらう花束を地元のサッカー少女から受け取った。 アメリカとの決勝戦では前半14分までの3失点に絡み、思考回路に混乱をきたしたまま同33分に澤穂希(INAC神戸レオネッサ)と交代。ベンチに下がった直後から号泣し、カナダから帰国した7日も「励ましの声をもらうたびに辛い」と大粒の涙をほおに伝わせた。 ベレーザの全体練習に合流したのは10日。その直後に女子W杯後では初めて更新されたオフィシャルブログ『Supernova☆』では、「感謝。」というタイトルとともにこんな言葉が綴られている。 「消えない思いはそのままですが、そのままでも前に進むことにしました。(中略)またあのステージに立てるように。『次はアメリカに勝つ』この思いは忘れずに毎日がんばります」 花束を抱えてピッチを去る直前には、埼玉のサポーターたちから期せずして「岩清水コール」が沸きあがった。立ちどまって一礼した岩清水は、試合後には有吉、ヒロインの原とともに拡声器を手にしながら、サポーターへ笑顔で勝利を報告していた。 ベレーザの森監督は出場停止明けとなる、ジェフユナイテッド千葉レディースとの次戦では岩清水を先発で起用すると明言。文化として定着させるためにも、立ち止まってはいられないと思うに至ったのだろう。必死に前を向き続け、精神的なショックを乗り越えたと指揮官は目を細めた。 「ベレーザに戻ってきてからは、明るく振る舞っている。メンタル面は大丈夫だと思います」