東京23区大学定員抑制は少子化対策か──地方大は若者流出防ぐダムではない
仕事や買い物で「ミニ東京」化すれば、人口流出は防げるのか
つまり、今は人口動態の構造が大きく変わってきた、ということです。その流れを押さえておかないと、「若者を逃がすな」ということばかりになってしまう。県庁の部長らは、県内に企業を誘致、あるいは新しい産業を興して、働く場所を作ることが大事だと共通して言っている。働く場所がなかったら、食べていけない。その通りですよね。 ところが、現実はどうか。その部長によれば、企業立地は旺盛で、加えて中小企業を中心に、企業継承問題が非常に深刻。労働力不足。つまり、稼げる産業、会社はある。ところが、人がいないことが問題になっている。だから少なくとも静岡に関しては、仕事がないことが地方の問題ではない。では何が問題かといえば、地方の企業あるいは産業に、若い人が魅力を感じていないということです。 大都市圏との賃金格差もあるでしょうが、家賃が安い、食べ物が安いなどを生涯通して考えたら、そんなに地方の賃金が安いということはない。特に高卒の場合は、ほとんど差がないと言われています。だとしたら、何を目指して地方を離れていくのか。仕事もあるのかもしれないけれど、それ以外の都市的な魅力というのが非常に強い吸引力ではないでしょうか。 静岡の場合、20歳から24歳の層からの流出率が高く、特に女性は男性の3倍くらいあります。だから、経済的な要因以外の魅力、地域の魅力をどうやって生み出すのか、ということが問題だと思います。ただ、その問題をわかってはいるわけですけれども、どうしたらいいかで悩んでいます。 「ミニ東京」になれば、満足するのか。静岡にもディズニーランドがほしいと、グループディスカッションで報告した学生もいる。でも、静岡からだって、いくらでも遊びに行けます。では、ファッションなのか。東京と同じ店が出店したところで、1時間新幹線に乗って買いに行けばいいわけだから、本当に満足できるのか。それだけで魅力を感じるのか。本当によくわからないです。人口学的な背景をしっかり押さえた上で議論しないと、逆に若者に嫌われてしまう政策を出しかねないと思います。