SBI・三井住友、新NISAのクレカ積立「改悪」 かすむ顧客本位
「このタイミングでのポイント付与条件の改悪は、商業道徳上いかがなものか」。クレジットカード決済による投資信託の積立購入(クレカ積立)を利用してきたある個人投資家は、SBI 証券と三井住友カードが3月22日に発表した、クレカ積立サービスのポイント付与条件見直しを受けて、憤りをあらわにした。 【関連画像】「三井住友カード つみたて投資」のポイント付与条件の変更内容 新NISA(少額投資非課税制度)特需の分捕り合戦を続ける金融業界。個人投資家にとって、銀行口座や証券口座からの引き落としと比べてポイント付与などの魅力があるクレカ積立は人気を集め、金融機関にとっても主戦場となった。一方で、過当競争による混乱も生じている。 金融商品取引業等に関する内閣府令が3月8日に改正されたことにより、クレカ積立の実質的な投資上限額が、これまでの1カ月当たり5万円から10万円へと引き上げられた。この改正は、ポイント還元率の高いクレジットカードで投信を積立購入する個人投資家にとっては朗報だった。そんな喜びもつかの間、三井住友カードがSBI 証券のクレカ積立サービスのポイント付与条件を大幅に引き下げることを明らかにした。 三井住友カードの中で最もカードランクが高い「プラチナプリファード」は、ポイント付与率が5.0%だったが、2024年11月1日買い付け分以降、カード利用額が年間500万円以上で3.0%、同300万円未満なら1.0%へと引き下げられる。クレカ積立のために同カードを利用していた顧客にとっては後ろ向きな改定となった。 新しいNISAが24年初めに開始して3カ月後、“NISA客”をある程度囲い込んだタイミングでクレカ積立のポイント付与条件改定を発表した三井住友カードとSBI証券。この発表を受けたある個人投資家は、「SBI証券で既に新NISAを利用しているので、楽天証券に変更したくても今さらできない」と漏らす。 数年前まで証券会社は、加盟店がカード会社に支払う手数料の負担があるため、クレジットカードとの連携を敬遠する傾向があった。それを打ち破ったのが、楽天証券だ。クレジットカード事業を持つ「楽天経済圏」の強みを武器に、楽天ポイントなどを付与することでNISA客を囲い込んだ。これがモデルケースとなり、SBI証券など他の証券会社も、各種ポイントサービスを組み合わせてクレカ積立のシェア獲得に邁進した。 SBIホールディングスによると、23年10月~12月にNISA口座を他の金融機関からSBI 証券へと変更した顧客のうち、楽天証券からの割合が実に48.9%(約11万件)を占めている。三井住友カードのポイント還元率の高さに引かれた顧客が、楽天証券からSBI証券へと流入している可能性がある。三井住友カードが23年1月に調査した同社カードへの加入動機に関するアンケート結果では、1位が「SBI証券での投資(23%)」となっており、クレカ積立への関心の高さがうかがえる。