脱炭素の希望となるか─「土+菌類」に賭けるオーストラリアの農家たち
「土」の可能性
土に秘められた二酸化炭素除去の力には、めざましいものがある。「気候変動に関する政府間パネル」の調査によると、土は空気に比べて3倍もの二酸化炭素を蓄えることができるため、なんと1年間で5ギガトンもの二酸化炭素を吸収できる。人間の活動によって生み出された二酸化炭素の約7分の1を吸収してしまう計算だ。 土は、海に次いで世界で2番目に二酸化炭素を多く貯留できる場所なのである。 「土こそが環境改善のカギを握っています」と、スタンフォード大学で気候科学を研究するロブ・ジャクソンは語る。とはいえ、「本当の意味で変化を起こすには、数十億エーカーもの土地に菌類をまく必要があるでしょう」とのことだ。 ローム・バイオの菌類パウダーは今年、10万エーカーものオーストラリアの農地に散布されてきた。来年はさらに25万エーカーの土地に散布される予定だ。米国でも6つの農家が菌類パウダーを自身の大豆畑で試している。カナダとブラジルでも、農地での実験が進められている。 ローム・バイオは、1億ドル(約150億円)もの投資を得ることに成功。土で二酸化炭素削減を試みるスタートアップ企業のなかでも、これはトップクラスの資金だ。
Somini Sengupta