サッカーが上手ければいいのか? 尚志指揮官のモットー。「1番辛い」サブGKを絶賛!「掛けられる」し「賭けられる」人間力【選手権】
PK戦の直前に投入「今回は賭けてみました」
[高校選手権・1回戦]東福岡(福岡)0(PK5-3)0 尚志(福島)/12月29日/NACK5スタジアム大宮 【動画】尚志GKが独特な動きを見せたPK戦 「まず人間力」 尚志を率いる仲村浩二監督が、スコアレスで突入したPK戦の末、東福岡に敗れた後に口にした言葉だ。 千葉県出身、52歳。習志野高、順天堂大を経て福島FCでプレーした経歴を持つ指揮官のモットーは、「サッカーが上手ければいいってことはない」である。 「出てる人間も、出てない人間も、ベンチにいる人間も、応援している人も、みんな同じ人間。そういうなかで、僕らが何を背負って戦おうかってところで、福島で震災があったことを踏まえて、『こういう苦労した県なんだよ』『勇気や希望を届けられればいいんじゃないか』って。それが最初にベスト4に行った時(2011年度)のテーマだったので。あの時はもっともっと全然力のないチームだったけど、力以上のものを出せました」 人間性を特に高く評価したのは、針生東だ。彼は国体歴もあるGKだが、同じ3年生の野田馨に定位置を譲り、東福岡戦では後半アディショナルタイムから出場。PK戦の際には、ピッチに座り込んだり、独特のステップを踏むなどし、相手を揺さぶり続けた。 仲村監督はその存在に非常に助けられたようだ。 「彼が仲間に掛ける言葉がものすごく素晴らしい。どんなに逆境なプレミアリーグ(EAST)の時も、1人で前を向いて『戦うぞ』と常に言い続けてくれたので、チームが悪い方向に行きそうなのも、彼が戻してくれるというか。今、俺が掛けてほしい言葉を掛けてくれたり、チームが緊張してる時はリラックスさせてくれる素晴らしいサポートキーパー。 (PK時の行動に関しては)直前の練習の時に、ああいう面白いパフォーマンスをして、結構止めたんですね。だから、彼の人間力も含めて賭けてみようかなと。1本も止められなかったら、ちょっとへんちくりになっちゃったかなと思うんですけど。でも僕らはもう信じて。それもわざと1人枠を残したわけじゃなくて、展開の中で空いていれば使おうかなっていう。それで勝てれば本当に幸せだったんですけど」 GKは唯一たった1人しかピッチに立てない、非常に特殊なポジションだ。 「サブキーパーは1番試合に出られなくて、1番辛い状況のなかで、(彼は)すごくチームを支える素晴らしい人間。最初は自分勝手な部分がちょっとあったけど、『チームのために』ってのを全面的に出せるようになったので、今回は賭けてみました。ああいうユニークなことも普通の高校生だとやりづらいじゃないですか。でも彼はチームのために、1本でも止められるように『小さくしてから大きくする』アイデアでやったということだったので、信じました」 野田と切磋琢磨し、心身ともに成長した針生は大学でサッカーを続けるという。この先もチームために率先して動ける、ガッツ溢れる守護神の活躍に期待したい。 取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)