豆を使わず味わいや香りを再現した新たなコーヒー 「2050年問題」解決の一助になるか
10月1日は「国際コーヒーの日」。毎日のように飲む人も多いコーヒーを、気軽に楽しめなくなる日が来るかもしれない。世界のコーヒー豆生産量の約6割を占めるアラビカ種の栽培適地が、2050年までに半減するとされているからだ。これが「コーヒー2050年問題」。豆の価格高騰と供給不足が心配されるなか、代替コーヒーの開発や新品種育成、産地支援といった対策に業界が取り組んでいる。 ■分子レベルで同一に 「私たちは代替コーヒーを開発したのではありません。豆を使わずに新しいコーヒーを作り上げたのです」。こう胸を張るのは、米シアトルに本社のある「ATOMO COFFEE」の最高執行責任者、エド・ホーンさん（44）。同社は、デーツの種子など植物由来成分のみを使って、見た目も味も香りもそっくりな「アトモコーヒー」を開発した。 コーヒー豆を使わずに味を再現する代替コーヒーは、タンポポの根で作る「たんぽぽコーヒー」や、チコリの根の「チコリコーヒー」が知られるが、アトモコーヒーはこれらと一線を画する。 同社はコーヒー豆を独自の手法で分子レベルまで解析し、味や香りの再現に欠かせない28種の成分を特定。1000種類以上の植物由来の食材の中から必要な成分を見つけ出し、分子構造がコーヒーと同一になるように配合したのだという。原材料には、デーツの種をはじめ、クワ科の植物ラモンの種、ヒマワリの種、レモン、グアバ、フェヌグリーク（ハーブ）などが使われている。 東京・渋谷のカフェ「ash（アッシュ）」で、アトモコーヒーのエスプレッソ（583円）をいただいた。表面の泡（クレマ）は少なめだが、鼻腔をくすぐる濃厚な香りは、いつものエスプレッソと変わりない。味わいはすっきり、あっさり。苦味は少なく、酸味が立っている。バリスタの石谷貴之さん（43）は「本来のコーヒーも、味わいは豆やいれ方によってさまざま。こんなコーヒーもあると思っていただければ」とほほ笑んだ。 ■気候変動と労働問題が要因
