オーストラリア、国民が抱える学生ローン債務の20%を免除へ(海外)
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、学生ローンの負債額を20%免除する計画を発表した。 労働党が選挙戦で苦戦を強いられる中で、「世代間の公平性」をアピールするのが狙いだ。 この計画で、105億米ドル相当の負債が消えることになるが、その価値があるとすべての人が確信しているわけではない。 オーストラリア政府は11月3日、大がかりな計画を発表した。オーストラリア国民約300万人が抱える学生ローンを20%免除するというものだ。 現在の労働党政権が続いた場合、2025年6月に発効となり、これにより105億米ドル(約1兆5750億円)相当の負債が消えることになる。 「今、学生ローンを抱えている全員を支援する一方で、今後数年間、すべての学生の学費を安くするよう努める」と、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー(Anthony Albanese)首相は11月3日に述べた。 政府によると、この変更によって、平均的な卒業生が負う1万8200米ドル(約273万円)のローン請求から、3642米ドル(約5万4630円)が免除されることになるという。 残りの負債は、最低返済額を4万4200米ドル(約663万円)とする新たなプログラムのもとで返済されることになる。 このローン救済は、「世代間の公平性」を促進するためのものだ、とアルバニージー首相が11月4日のオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting)のラジオ放送で語ったとブルームバーグは伝えている。 「小学校に通っている子どもの80%に、大学の学位か、技術・進学(TAFE)資格が必要なことは分かっている。就職のための付加価値としてでなく、就職の前提条件として。経済に変化が起こっているからだ」 労働党政権への支援を促進するためでもあるようだ。高インフレ率、物価高、住宅不足のため、政権への支持は弱まっている。次の総選挙は、2025年5月に行われる予定だ。 だが、この動きが正しいと、皆が確信している訳ではない。 オーストラリア国立大学の高等教育政策の実務教授、アンドリュー・ノートン(Andrew Norton)によると、将来のローンも減額されるべきだという。 「ここ数年で、高額の教育ローンがオーストラリアの若者たちにとって、どれほどのストレスやダメージになっているかが強調されてきた」とノートンはウェブサイト「ザ・コンベンション(The Conversation)」に書いた。 「だが、アルバニージー政権の計画には莫大なコストがかかり、優先順位も完全に正しいとは言えない」とノートンは付け加えている。 「未来のローンを管理すること、例えば、卒業生就職準備プログラム(Job-ready Graduates program)での授業料値上げを撤回することなどが、古いローンを減らすことと同じくらい重要だ」
Hannah Abraham