ハイエイタス・カイヨーテ、8年ぶりとなる単独来日ツアーの初日・豊洲PIT公演のレポート公開
ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)の単独公演としては実に8年ぶりとなる来日ツアー〈Love Heart Cheat Code - JAPAN 2024〉の初日公演が、10月30日に東京・豊洲PITにて開催。当日の模様を伝えるレポートが到着しています。 なお、1月11日(金)大阪・大阪城音楽堂公演は立ち見席チケットが販売中です(残りわずか)。 また、ツアー直後の11月2日(土)には、1日限定のスペシャル・ポップアップの開催も決定。会場となる東京・NEW NEW YORK CLUB DELI & GROCERY 中目黒店が、11月2日限定で「LHCC MART」に生まれ変わり、最新ツアーグッズはもちろん、海外のポップアップで販売されたスタジアムジャンパーやホッケージャージ、歌うぬいぐるみ、ラグ、ネックレス、さらにチョコレートやチューインガム、オリジナル・ベーグルやオリジナル・クラフトビール、そして『Love Heart Cheat Code』のグロー・イン・ザ・ダーク・ヴァイナルまでが並びます。当日はバンドも来店予定(時間未定)とのこと。詳細はBeatinkの公式SNSをご確認ください。 [ライヴ・レポート] 3度グラミー賞にノミネートされ、多くのアーティストにリスペクトされるハイエイタス・カイヨーテの8年ぶりとなる単独来日公演。東京の会場は豊洲PITだ。昨秋、ドージャ・キャットが彼らの楽曲「Red Room」のカバーを披露したことも話題となったが、今年6月名インディーレコードレーベル〈Brainfeeder〉からアルバム『Love Heart Cheat Code』をリリースしたばかりの絶好のタイミングでのライブを見ようと、PITはチケットソールドアウトの超満員だ。 開演時間が過ぎ、ポール・ベンダー(b)、サイモン・マーヴィン(k)、ペリン・モス(ds,perc)というメンバー3人に加えて、3人のコーラス隊が姿を見せた。オレンジ色のベールを被った“ネイ・パーム”ザールフェルト(vo,g)が現れるとひときわ大きな歓声が上がった。まずは、『Love Heart Cheat Code』の冒頭を飾る「Dreamboat」。シンフォニックで美しいハーモニーがPITに充満し、一気に多幸感で包みこむ。 前アルバム『Mood Variant』に収録されている「And We Go Gentle」の深遠なアンサンブルが演奏される中、ネイ・パームが「What’s up Tokyo!」とエネルギッシュに叫び、「ライトをちょうだい」と言うと、スマホの波が出現。「And We Go Gentle」はなぜ蛾が光に惹かれるのかを歌った曲だが、「Tell me, can I get a light?」というフレーズがリピートされる中、ゆらゆらと揺れるライトと重層的なコーラスが呼応し、幻想的な音像を作っていく。ネイ・パームは嬉しそうに「キラキラ!」と日本語を口にした。ステージを歩きながら、拳を効かせたボーカリゼーションでじわじわと温度を上げていく。ネイ・パームが「新しいアルバムは聞いた?」と話しかけた後、金属を鳴らすような音が聞こえた。最新アルバムのタイトル曲「Love Heart Cheat Code」だ。不均衡を味わうかのような絶妙なアンサンブルの中で開放感溢れるが響く。何度も繰り返される「Love Heart Cheat Code」というワードはネイ・パーム曰く「愛とともに前進するためのチートコード」。そのマジックワードが約3000人のオーディエンスにダイレクトに共有されていった。 「All The Words We Don't Say」「Get Sun」「Sip Into Something Soft」と『Mood Variant』の楽曲を続ける。ネイ・パームもおなじみのVシェイプのギターのシャープなカッティングを聞かせ、凄腕の4人の楽器隊として、ものすごくプログレッシヴだが問答無用に踊れるハイエイタス・カイヨーテならではの異次元のグルーヴを紡いでいく。もちろんコーラス隊のハーモニーも完璧である。オーディエンスは心身が解放されたように大きく体を揺らして踊っていた。曲が終わる度に大きな歓声が上がり、その熱狂に応えるかのようにネイ・パームは度々「ありがとう!」と日本語で感謝を伝えた。あまりの熱気にネイ・パームが「大丈夫? 水は持ってる?」と問いかけ、笑顔で「乾杯!」と言う場面もあった。言わずもがな超絶な技量を持ったボーカリストではあるが、MCはとてもラフでチャーミングだ。それはバンド全体の複雑だけれどフレンドリーなアンサンブルとも重なる。 ムーディーな赤いライトがステージを照らした「Red Room」。ネイ・パームが「Singing!」と言うとシンガロングが巻き起こった。「いろいろなCatがいるよね。日本語でCatは猫?」とフロアに問いかけると、あちらこちらから「猫!」という声が上がった。スピーカーから「ミャー」という鳴き声が聞こえ、フロアのあちらこちらからも「ミャー」とか「ニャー」という声が上がり、「Long cat (short version)」へ。ネイ・パームが「Long!」と叫ぶと、フロアが「Cat Cat」と応えるコール&レスポンスが楽しい。アウトロでネイ・パームは楽しそうに「明日大阪に行くよ!」と告げた。そう、11日1日の大阪公演は大阪城音楽堂で行われる。このライブを野外で堪能できるのはさぞかし極上の体験となることだろう。 約1時間半、音楽の自由さ、楽しさ、奥深さをとことん味わったライブだった。 Photo by Kaoru Goto Text by 小松香里