素晴らしい結末…最後に活きた意外な設定とは? ドラマ『西園寺さんは家事をしない』最終回考察&解説レビュー
松本若菜主演、松村北斗共演のドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)が最終回を迎えた。本作は、家事をしない主人公・西園寺さんが年下の訳ありシングルファーザーと「偽家族」として暮らすハートフルラブコメディ。今回は、最終回のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】松本若菜&松村北斗の名場面が蘇る劇中カットはこちら。ドラマ『西園寺さんは家事をしない』劇中カット一覧
結末は意外だった?
最近、“多様性”という言葉をよく耳にする。「多様性を受け入れる」とか、「多様性を尊重する」とか。これらはすべて、他人の“普通じゃない部分”を受け入れましょうという意味で用いられているのは、何となく分かっている。 しかし、そもそも普通ってなんだろう。他人の普通じゃない部分をわざわざ引っ張り出して、「いいね!」と言うことが、多様性を受け入れることに繋がるのだろうか? そんなふうに、ずっと抱いてきた疑問が、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)を通して、解消された気がする。 正直なところ、最終回では西園寺さん(松本若菜)と楠見くん(松村北斗)が結ばれるものだと思っていた。だって、“偽家族”から始まった物語が行き着くところって、“偽”を外すことしか考えられない。本物の“家族”になることが、3人にとってのハッピーエンドなはずだ…と。 でも、西園寺さんと楠見くんは、“結婚”という形にはこだわらなかった。2人の間に恋愛感情が芽生えてしまった以上、“偽家族”を続けるのは苦しい。 とはいえ、本物の“家族”になってしまうと、ルカ(倉田瑛茉)が苦しくなる。ルカに3人でいたい気持ちがないのなら、西園寺さんも身を引いたはずだ。でも、ルカが誰よりも西園寺さんと離れたくない、3人でいたいと思っているから、むずかしい。
身の丈に合った生活を模索する西園寺さんの粘り強さ
思い返せば、「家族じゃない人に甘えるのは変だ」と言う楠見くんのために始まった“偽家族”生活。すると、これまで他人に甘えることができなかった楠見くんが、“偽”とはいえ家族だから…と西園寺さんに、ルカの子守りや家の用事をお願いできるようになった。最初は、名前をつけたからこそ上手くいっていたはずだった。 でも、日が経つにつれて、また違う問題が生じていく。これは、“偽家族”以外にも当てはまることだ。いいと思って進めていたものが、急に身の丈に合わなくなったり、逆に、合わないと思っていたやり方が、しっくりきたりすることだってある。人は、変わっていくものだから。 そこで、すぐにブラッシュアップできるのが、バリキャリ・西園寺さんの凄いところだ。「今までは偽家族がしっくりきていたのに、どうして合わなくなってしまったんだろう…」なんて、クヨクヨしない。すぐに前を向き、新たな形を作ろうとする。 偽大奥、偽大家族特番、偽修学旅行、偽リゾートバイト、偽日本代表…。さまざまな“形”を試してみたものの、なかなかしっくりくるものはない。これはもう、偽ではなく本物の“家族”になるしかないのでは? と思った人も多いだろう。 まさか、関係性に名前をつけたことで始まった3人が、名前をつけない、形にとらわれない…という結論にたどり着くとは、思ってもみなかった。 楠見くんは、「僕たちはただ、好きな人と安心して食べて、眠って暮らしたい。ただ、それだけなんで」と言っていた。それは、西園寺さんとルカにも共通する願いだ。ならば、名前や形にとらわれる必要はない。必要になったときが来れば、また話し合って決めていけばいい。