「GIGAスクール構想」開始から3年 端末更新、落下や耐衝撃が焦点 「天板拡張くん」も登場
公立小中学校に1人1台端末を整備する「GIGAスクール構想」は開始から3年が経過し、端末の更新など「GIGAスクール構想第2期」に向けた取り組みが本格化してきた。NECは3日、第2期に照準を定めた学習用端末の新モデルを発表。第1期で得た経験を踏まえ、堅ろう性や耐久性を向上させた。内田洋行は、既存の学校机の天板に取り付けて奥行きを拡張する器具を開発。端末を置いても机が幅広く使え落下を少しでも減らすのが狙いだ。児童生徒が使う端末だけに、各社とも性能に加え落下や衝撃対策に知恵を絞っている。 【関連写真】「天板拡張くん」を設置して広くなった机と通常の机の比較 第1期で160万台の学習用端末を出荷したNECは、培った経験を踏まえ「安全・安心・壊れにくい」をコンセプトに新モデル「NECクロームブックY4」を設計した。 第1期の修理実績は、トップカバー(43%)が最多で、液晶パネル(24%)、メインボード(13%)と続いた。同社スマートデバイス統括部の加藤賢一郎上席プロフェッショナルは「落下による破損対策や、ランドセルに押し込んでしまうことも多く加圧対策が重要」と分析。端末外周を、弾力性と強度を備えたTPU素材のカバーで一体成型したほか、端末裏側のゴム足の設置面積を広げた。外れたネジの紛失も多かったため、脱落防止リングを全てのネジに取り付けた。 USBやイヤホンと接続する開口部に異物が差し込まれ発煙する事故も報告されていることから、机上の鉛筆が誤って滑り込まない高さに設計して、左側面に集約した。 加藤氏は「修理事例に基づき試験回数や衝撃の加速度を増して耐久性確認試験を行ったほか、加圧振動試験も追加し、学校での使用時に起こりうるトラブルに対応していく」と強調した。来年1月ごろに受注を始め2月に出荷予定。2028年度までに200万台の提供を目指す。 一方、落下対策として「机」に着目したのが、オフィス家具を手がける内田洋行だ。児童生徒用デスクの天板は日本産業規格(JIS)の新タイプでも幅65×奥行き45センチメートル。教科書とノートを開いた上で、さらにタブレットを置くと一部が重なってしまいゆとりがなくなってしまう。 そこで、既存の学校デスクの天板に取り付けてデスクの奥行きを10センチメートル拡張できる後付け式の樹脂製の器具「天板拡張くん」を開発した。開発に携わった内田洋行学びのプロダクト課の中村馨さんは「机が広くなれば端末と教科書、ノートを全部開くことができ、子どもたちが勉強に集中できる」と力を込めた。 調達大型化で市場争い過熱 GIGAスクール構想第2期では、政府の負担によって都道府県に基金を設け、補助金を交付するとされている。第1期では市区町村単位で端末の調達が行われたが、今回は都道府県ごとの共通仕様書で共同調達が進められるとみられる。このため調達の大型化が予想され、関連各社の市場獲得争いも過熱してきた。 PC大手のDynabook(東京都江東区)は4月にクロームブック市場への本格参入を発表。GIGA第2期に向けて教育機関向け「ダイナブック・クロームブックC70」を製品化し、12月に発売する。覚道清文社長兼CEOは「これまでのウインドウズOSに加え、クロームOSを商品化し攻勢をかけたい」と意気込む。 サービスの開発も進む。KDDIは法人向けの基本パッケージと応用パッケージを用意する。ウインドウズとクロームOS端末、iPadのOS端末に対応。自治体や学校の要望に応じた利用者のID管理から英語・キャリア学習まで幅広いサービスを提供する。 ネットワークセキュリティーを手がけるフォーティネットは、GIGA第2期に対応したネットワークの可視化や端末の利用状況把握、セキュリティー対策を強化したパッケージソフト「Fortinet for NEXT GIGA School」を展開する。 文部科学省は、端末更新の補助金交付の前提として、各教育委員会に各種KPI(重要業績評価指標)の達成を求めている。フォーティネットのパッケージは、KPI達成度合いをデジタルデータで測るためのエビデンスの取得と、教職員や児童学生をサイバー攻撃から守るセキュリティー対策を同時に支援する。
電波新聞社 報道本部