情緒消費が新たなトレンドに
【東方新報】「自分を幸せにするためのアイテムを買う」から「アイテムを買って自分を幸せにする」へ――若い世代の消費者は、商品そのものだけでなく、心を癒やすもの、感情を解消するものを求めている。 若い世代が主要な消費者層となる中で、彼らは物質的な満足だけでなく、精神的な満足を強く求めるようになっている。最近発表された「2023年中国消費者権利保護状況年次報告」によれば、2024年には、コストパフォーマンス以外にも感情の解放が若い世代の消費決定に重要な要素となり、新たな消費トレンドとなる見込みだ。 ■感情にお金を使う新たなトレンド 北京市のショッピングモールでストレス解消グッズを選んでいた何凱(He Kai)さんは、「仕事のストレスが溜まると、ハンドスピナーやフィジェットキューブのようなグッズを買います。高価ではないですが、本当にリラックスできるんです」と話す。こうしたグッズは、実用性よりも心を和ませる目的で購入されている。 上海市で働く李盈瑩(Li Yingying)さんも、デスクに「幸運」を呼ぶアイテムを並べて楽しんでいる。例えば、四つ葉のクローバーやカピバラのお守りなどを見るだけで幸せな気分になり、仕事のストレスが和らぐという。 今や多くの消費者が感情のためにお金を使うようになっており、オンラインで人気の安価なストレス解消グッズや、癒やしのメッセージが入ったスマホケースやTシャツが多く売れている。最近では、実物のない商品も人気を集めている。たとえば「アインシュタインの脳」というバーチャル商品が注目されている。これは、購入するとアインシュタインの画像が送られてきて、さらに励ましのメッセージが届くというものだ。この商品を見つけた「00後」(2000年代生まれ)の張建茜(Zhang Jianxi)さんは、1年で7万件も販売したという。 「アインシュタインの脳」や「生気を失わせる杖」など、ユニークな商品が次々と登場している。こうした商品は、若者の好奇心や感情を満たし、感情的な体験や精神的な満足を提供することで、消費者のニーズに応えている。中国社会科学院の楠玉(Nan Yu)氏は、感情消費は精神的なニーズを満たすためのものであり、消費の仮想化、象徴化、心理的な補償といった特徴があると指摘している。 ■新たな消費シーンと業態の誕生 若者の間では「感情のための消費」が広がり、癒し、瞑想、手作り体験などの新たな消費シーンや業態が次々と登場している。「2024年中国青年消費トレンド報告」によると、30パーセントの若者が心身を癒やすためにお金を使うことがあるという。 北京市のIT企業で働く張旎(Zhang Ni)さんは、ストレスが溜まると陶芸や編み物、フラワーアレンジメントなどの手作り体験に参加し、心を落ち着けているという。「90後」(1990年代生まれ)の李浩宇(Li Haoyu)さんは、瞑想やアロマテラピーが好きで、これらのサービスが心と体をリフレッシュさせてくれると話している。 生活関連サービス企業「美団(Meituan)」のデータによれば、「癒し」という言葉の検索数は今年に入り256パーセント増加。特に「癒し+SPA」のようなサービスが増えている。 ■正しいガイドラインと規制が必要 感情を癒やすための消費は市場を活性化させる一方で、プライバシー侵害や不正な料金請求などの問題も発生している。こうした状況に対し、楠玉氏は情緒消費を適切に導き、明確な規制と監視が必要だと指摘している。虚構商品を含む「感情商品」について、業界基準を設定し、問題が発生した際の苦情や対策を整えることが重要だという。 消費者もまた、現実社会での交流を増やし、感情の充足を求めることで、より豊かな精神的な生活を送ることが期待されている。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。