無名ながら都知事選で15万票獲得!安野貴博氏が語るデジタル民主主義の真髄
大切なのは3つのプロセス
「インターネットやスマートフォンの普及によって、誰もが自分の意見を表明できるようになりました。しかし、これは問題でもあります。すべての意見に耳を傾けることは難しいからです。しかし、私たちは今、LLM(大規模言語モデル)によって自然言語を処理し、多くの情報をまとめられます。だからこそ、私たちはブロードリスニングによって多くの意見を取り入れ、選挙のコミュニケーションを双方向に変えていく必要があるのです」 こうしたブロードリスニングを実現するにはどうしたら良いのか。安野氏が強調したのは、そのプロセスを「リスニング」「ブラッシュアップ」「デリバリー」という3つのパートに分割し、このサイクルを高速で回す方法だ。
「リスニング」で民意を可視化
1つ目の「リスニング」は、より多くの民意をすくい上げて可視化すること。アメリカのNPO法人「AI • Objectives • Institute」が提供しているオープンソースソフトウェア「Talk to the City」を使うことで、X(旧Twitter)やYouTubeなどさまざまなソースから収集したコメントを処理し、人々の意見の全体像を可視化している。
「ブラッシュアップ」で政策を議論
続く「ブラッシュアップ」は、政策について議論する場をつくること。安野氏はGitHubを導入し、AIで有害なコメントを排除しつつ、わずか17日間の選挙運動期間中に200以上の課題を提起。うち半分以上にプルリクエスト(修正や改善の提案)が届き、マニフェストをアップデートし続けたという。 その成果は目に見える形で現れた。 早稲田大学マニフェスト研究所が主な候補者9人の検証したところ、点数(100点満点)が最高の50点だった。同研究所は対象者全員への総評として「生煮えの状態であり、とても事後検証可能なマニフェストとは程遠い」と厳しく指摘した一方、安野氏への個別コメントでは市民参加型でマニフェストがアップデートされていく点を「非常に面白い」と激賞した。 「これまでこんなスピードでマニフェストを更新することは不可能でした。早稲田大学マニフェスト研究所の評価で得た最高得点。これは過去10年間で最も評価が高かったようです」