95歳のゲイ 偏見と差別の時代を生きた苦悩は「とても言えなかった。『同性愛』という言葉も世間に知られていなかった」
■友人クロイドさん「アメリカでゲイの人たちの生活を見て自信がついた」
今、長谷さんが特に親しくしているのが同じくゲイで64歳のボーン・クロイドさん。東京に住んでいるが、2カ月に1回は長谷さんのもとを訪れる。年齢は30歳以上も離れているが、出会いからすっかり意気投合した。「僕と長谷さんでは世代的に全然違うので、日本の状況もかなり違った。僕自身はハーフだし、こういう見かけで日本人社会に属していないような感覚もあるのでカミングアウトしやすい部分はあった。僕自身は13歳ぐらいで『自分がゲイだな』と気付いた。日本人は言ってはいけないとか、悪いことという風に思う人が多いみたいだが、僕自身はそんなに罪悪感のようなものはなかった」と、ゲイ同士でも感覚が大きく異なることを説明した。 クロイドさんにとっても、大きなきっかけはあった。「生活者としてのゲイが見えない日本の中で暮らしていて、ロールモデルがなかったのですごく悩んだ」ところ、アメリカに仕事で行ったことが転機になった。「アメリカのゲイの人たちと出会い、パートナーがいて普通に買い物をしている人たちを見た。こういうモデルがあるんだから生きていけると自信がついて、30歳ぐらいの時にカミングアウトした後は、本当に楽しくなった」と、ガラリと人生が変わったという。
■同性愛者を取り巻く環境「日本が遅れているとは思わない」「勇気を持って言ってみること」
90年近く、内に秘めていた同性愛をカミングアウトした長谷さんが、今願うことは何か。「勇気を持って言ってみること。1回でも自分の言葉で口にしたらすっきりする。今は遠慮なく同性愛という言葉が使えるようになった。結婚制度にしても、一人暮らしが多い同性愛者も異性と変わりなく生きられるような社会になってほしい」と述べると、クロイドさんも「僕より上の世代は、女性との結婚を選択するゲイの人も多かったと思うので、老後は異性愛者と同じで、そんなに不安はない。ただ僕より下の世代は結婚しない選択ができたので、1人で生きていかなければいけないし、セクシャルマイノリティの老後のロールモデルがない」と、同性愛者の老後に視点を向けた。アメリカであれば同性愛者間で結婚ができることも例に挙げ「日本でもそれが認められる日が来ると信じている。アメリカで認められたのも2015年で、そんなに前でもないし、日本がすごく遅れているとは思わない。来年か再来年、最高裁で判決が出ると思うので僕はそこでいい判決が出ると信じている」と期待していた。 (『ABEMA Prime』より)