〈NHK大河〉道長のライバルだった兄・伊周とはまったく違う…平安最大の危機を救った藤原隆家の意外な最期
■三流の韓流ドラマのよう 「光る君へ」では、ちょうどまひろが旅に出て、大宰府に下ったところで刀伊の入寇に遭遇するようだ。しかも、そこにはまひろが越前で出会った見習い医師の周明(松下洸平)がいれば、娘のかたこをふって大宰府にきた双寿丸もいる。ここまで偶然を重ねると、三流の韓流ドラマのようで、もう少し自然ななりゆきのほうがよかったのではないか、と突っ込みも入れたくなる。 それはともかく、隆家が大宰府にいたおかげで、刀伊の入寇を撃退することができたわけで、もし異賊の上陸を許していたら、九州のみならず、中央の宮廷に甚大な影響が生じた恐れがある。むろん、道長が築いてきた自身およびその血縁による支配体制も、大きなダメージを受けた可能性がある。 その意味で、「光る君へ」で安倍晴明がいった「隆家様はあなた様(道長)の強いお力となりまする」は、20年の時を経てたしかに実現した。 その後、隆家は長暦元年(1037)からふたたび大宰権帥を務めた。長久5年(1044)正月、66歳で亡くなったが、その家系は明治維新まで続いた。武功は必ずしも出世にはつながらなかったが、血脈は安泰となったのである。 ---------- 香原 斗志(かはら・とし) 歴史評論家、音楽評論家 神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。 ----------
歴史評論家、音楽評論家 香原 斗志