アンモニア・CPL国内生産、28年度停止検討…UBEがCO2削減前倒し
UBEはアンモニアとカプロラクタム(CPL)の国内製造を停止する時期について、当初計画の2030年度から28年度に早める検討に入った。アンモニアは国内でのみ製造しており、現行の設備・製法では同社グループが排出する二酸化炭素(CO2)の4割を占める。アンモニアを原料とするCPLはアジア市況の悪化が続く中、操業停止によってカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現を前倒しする。 【図解】UBEによるアンモニアとカプロラクタムの生産体制 UBEは競争力のある高機能製品に注力する構造改革を進行中で、操業停止の前倒しはその一環で行う。現行のアンモニア製造設備は1980年代初めから運用しており、原料にペトロコークスを使う。古い設備でアンモニアを供給し続けても、脱炭素社会に向けた燃料や原料には適さない課題があった。 ナイロンの原料となるCPLは、アジアにおける大口契約価格の低迷が続く。好調だった11年の同社の月平均価格は1トン当たり3155ドルだったが、中国大手の供給増で需給が緩み、24年11月には同1520ドルまで下落した。足元も中国での設備増強の勢いは衰えておらず、アジア市況の回復は望みにくい。UBEの泉原雅人社長が「構造的悪化」と指摘する状況にある。 同社は日本とタイ、スペインの世界3極でCPLの生産体制を構築しており、最適化策を実行中だ。23年度に共重合ナイロンを日本からタイへ移管し、24年度に入って日本のCPL生産量を従来比4割減らした。状況によっては、CPLは国内製造から実質的に撤退する選択肢も視野に入れている。 日本と同じくアジア市況の影響を受けるタイについては、同社の経営に対する影響を最小限にする方針。一方、スペインでは欧州で厳格化される環境規制に対応できる強みを訴求していく。