口に生ごみをためない心がけ 歯間ケアしない選択は口臭予防の観点からもNG/歯学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<27> 歯ブラシによるブラッシングだけでは汚れは6~7割程度しか落とせないことが研究で明らかになっており、デンタルフロスや歯間ブラシといった補助的清掃用具を併用しない選択は口臭予防の観点からもNGです。歯科医院で定期的に歯石除去をしていたとしても、普段のセルフケアが適当であれば2~3日で元通りになってしまうため、現代の歯科医療では、患者さん自身がある程度の汚れを自力で落とせるようになるOHI(Oral Hygiene Instruction)という口腔(こうくう)衛生指導を行うことが常識になっています。角度や圧に注意すれば、歯ブラシの当て方は比較的簡単にマスターしやすいのですが、要はやはり歯間ケアです。ところが、ときどき「デンタルフロスを使うと歯に隙間ができるので絶対に使いたくない」という強い意志を持つ方に遭遇します。 過度な力をかけて周囲の粘膜を傷つける、あるいは不適切な方向から無理に挿入するような使い方をしている場合は、歯ぐき下がりや歯の摩耗などによって「歯に隙間ができたように見える」可能性はゼロではないかもしれません。しかしながら、こうしたツールを使わない選択はむしろ、さらに大きな隙間を作る要因になりかねません。虫歯や歯周病などのトラブルのほとんどは歯と歯の隙間から起きます。虫歯が進行すれば歯に穴が開きますし、歯周病が重症化すれば歯を支える骨までもが溶かされ、歯のくびれが目立って老いたイメージになります。動揺すれば、それこそ歯並びも乱れます。 病気の発症にはいくつもの要素が絡み合っているので、デンタルフロスだけの使用が歯周病や虫歯に対する直接の予防効果があるか否かという議論には決着がついていないのが現状です。とはいえ、隙間に食べかすが挟まったままであれば、どう見ても爽やかな口とはいえないでしょう。台所に生ごみをためているのとまるで同じなのですから。