井上尚弥 日本選手歴代1位の世界戦23勝 「ちょっと中途半端」も11キロ増のドヘニーにTKO勝ち
「ボクシング・4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(3日、有明アリーナ) 【写真】吸い込まれそうな大きな瞳 井上尚弥戦ラウンドガール 美形の元アイドルだった 世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチで、統一王者の井上尚弥(31)=大橋=が、元世界王者で挑戦者のTJ・ドヘニー(37)=アイルランド=に7回16秒、TKO勝ちし、4団体の王座を防衛した。WBCとWBOは3度目の防衛で、IBFとWBAは2度目の防衛。世界戦通算23勝目とし、井岡一翔(志成)を抜いて日本選手歴代単独1位となった。 誰もが想像だにしなかった結末だった。7回開始早々、尚弥が4連打を放ったところでドヘニーが「待った」のようなしぐさを見せ、腰を押さえて足を引きずり、何かを訴えるとレフェリーが試合をストップ。井岡を抜き、日本選手歴代単独1位の世界戦通算23勝目を挙げたが「理想とする終わり方ではなかった。ちょっと中途半端な終わり方になってしまった」と、複雑な表情を浮かべた。 コーナーに座り込んで立てないドヘニーは、関係者の両肩を借りて退場。陣営は、6回に受けたパンチで腰の神経を痛めたと説明した。尚弥は「中盤から距離感もつかめてきた。後半にかけてしっかり見せ場を作ろうと思っていた」と振り返ったが、そこまで持ち込む前に、あまりにも唐突なフィニッシュを迎えた。 不本意な終わり方ではあったが、収穫もあった。前日計量から11キロもリカバリーしたドヘニーを相手に「(パワーは)多少感じたけど、そんなにビックリするほどではなかった」と危ないシーンはなし。自身は当日62・7キロで、今までで最も多い7・4キロ戻したが「意図的に増やせるだけ増やしてみようと。ボクシングスキルが落ちない程度に、どこまでリカバリーができるか試してみようと思った。若干重たいのかなと少し感じた」と、貴重な経験値も得た。 また、5・6東京ドームのネリ(メキシコ)戦では1回に自身初のダウンを喫したが、この日は「ボクシングは簡単なものじゃない。倒しに行こうと思って倒せるスポーツではないので、しっかりとボクシングを組み立てることを意識した」と、隙のない立ち上がりを見せた。 リングで「まだまだ完成していない。まだまだ上を目指して頑張っていきたい」と語った尚弥には「上」の舞台が用意される。尚弥と契約する米トップランク社を率いる大物プロモーター、ボブ・アラム氏(92)はリング上で「年内にもう一度東京で試合して、来年はラスベガスで大きな大きなイベントを開催したい」と宣言した。 これまでラスベガスで2試合を戦った尚弥だが、今回はTモバイルアリーナやMGMグランドアリーナといった当地を代表する会場になる見込み。東京ドームに続き、スーパースターにふさわしいステージで、この日の分も輝く。 ◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年4月10日、神奈川県座間市出身。相模原青陵高時代にアマ7冠に輝いた。2012年10月にプロデビュー。14年、WBC世界ライトフライ級、WBO世界スーパーフライ級、18年にWBA世界バンタム級王座を奪取し、3階級制覇を果たした。22年、アジア勢とバンタム級では初の4団体統一。米専門誌「ザ・リング」選定のパウンド・フォー・パウンドに日本人で初めて選出された。23年、スーパーバンタム級でも4団体統一を果たし、史上2人目の2階級での4団体統一。戦績は28勝(25KO)165センチ。右ボクサーファイター。