入場料2530円の本屋が話題 「本を買う」だけでない、一風変わった本屋の「納得の体験価値」
余計な心配や気遣いをなくすために「一風変わった」仕組みがある
さて、次は本屋から少し業態を変えて「一風変わった」ブックカフェを紹介します。下北沢など都内に3店舗を構え「本の読める店」をコンセプトに掲げるブックカフェ「フヅクエ」です。 店内にも本はありますが、それは店主やスタッフの私物。基本的には自分で持参した本を読むためだけにフヅクエに向かいます。 「本の読める場所」とはどういうことか。それは「勉強」「仕事」「パソコンの使用」「一緒に訪れた人との会話」、これらが全て「ご遠慮」の対象です。オーダーもコソコソ話のように行いますし、徹底して「静かな店内で思いっきり本を読む」環境が整えられています。 店内のお客さん全員が黙々と本を読んでいる、静かな空間。これは本好きの私から見てもなかなかに「一風変わった」風景です。 このようなコンセプトや空間が面白いのは言わずもがなですが、この店を「本の読める場所」たらしめているのは「飲み物や食事をオーダーするごとに席料が安くなる」という料金プランだと私は考えています。 例えばオーダーなしの場合は席料が1500円ですが、700円のコーヒー1杯をオーダーすると席料は900円に下がってトータルで1600円。コーヒー2杯を注文すると席料は300円にまで下がってトータルで1700円となります(2024年9月時点)。 何もオーダーせずに読書だけをしても、飲み食いしながら読書をしても、お会計金額はそんなに変わりません。 これはフヅクエ公式サイトの言葉を借りるならば「飲み食いの多い少ないにかかわらず、全ての方がいかなる気兼ねも不安も感じることなく、存分にゆっくり過ごしていただけるように設けている」という仕組みです。 ゆっくり本を読みたいけど、何か頼まないと申し訳ない。ゆっくり本を読みたいけれど、次の人が待っているのではないか……。このような心配や気遣いを排除してくれる、すばらしい「一風変わった仕組み」と言えるでしょう。だからこそ本が好きな人たちを引き付けてやまないのです。 「入場料を取る本屋」として紹介した文喫では入場料が「長居するためのチケット」のような役割を果たしていますし、「本屋の中に泊まれるホテル」は宿泊料がその役割と言えそうです。