デフォルト当面回避のギリシャに再び危機は訪れるか?
デフォルト危機に揺れたギリシャですが、欧州連合(EU)と新たな金融支援で合意し、当面のデフォルトは回避される見通しとなりました。これからさらなる緊縮策が待っており、国民の不満がさらに高まることも懸念されますし、与党内の分裂によりチプラス政権の行方も危惧されます。 7月23日にギリシャ議会が、EUに金融支援再開の条件として求められた財政改革関連法案の第2弾を賛成多数で可決したこともあり、当面のギリシャのデフォルトやユーロ離脱の懸念は回避されたといえます。しかし、ギリシャでは反緊縮政策のデモが続き、火炎瓶や催涙ガス弾が飛び交う騒ぎに発展しています。欧州委員会とIMFなどでつくる債権団との実務者協議は24日にアテネで始まる予定だったのですが、債権団は身の安全を確保できないとして現地入りを見合わせました。再び危機が拡大するような事態は考えづらいものの、今後の交渉の行方も注意して見ておく必要がありそうです。 それでは今後、ギリシャ危機が再発するようなことはあるのでしょうか。あるとすればどのようなタイミングで起きるのでしょうか。 それを予測する上で注目すべきものがあります。それは政権交代です。 ギリシャ危機は2010年と2015年の二度生じていますが、その要因にはいずれも政権交代がありました。2010年のギリシャ危機では、2009年10月にパパンドレウ新政権に変わったことにより、前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになりました。2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化したことを受け、格付会社は相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債は暴落しました。ギリシャ危機が生じたのは、債務そのものの大きさなどよりも、それを隠蔽していたことで政府への信認が失墜したことが大きかったのです。 2015年のデフォルトやユーロ離脱危機も、政権交代が絡んでいました。2010年以降のギリシャ危機を受け、ギリシャはトロイカと呼ばれるEUやIMF、ECBなどからの支援のもと、財政再建を進めてきました。経済や財政状況に改善はみられたものの、緊縮策に対する国民の不満は強く、2015年1月の総選挙でEU主導の財政緊縮策への反対を掲げる急進左派連合が勝利し、チプラス新政権が発足しました。 しかし、今度はトロイカとの亀裂が生じ、なんとかやりくりして5月のIMFへの返済あたりまではなんとかなったものの、それ以上はどうにもならない状況に追い込まれたのです。最後の頼みの綱となったEUはギリシャの改革が不十分として約72億ユーロのギリシャ向け融資を凍結、期限となる6月30日に向けて交渉は難航しました。その後国民投票の実施もあり、特にドイツとの関係が悪化したことでギリシャはデフォルト寸前に追い込まれましたが、最後はフランスのオランド大統領の取りなしなどもあって、ぎりぎりのところで危機は回避されたのです。