【カンヌ国際映画祭】5日目のレッドカーペットでセレーナ・ゴメスにブーイング! その理由は?
大階段5日目。期待の作品、ジャック・オーディアール監督の壮大なミュージカル映画『Emilia Pérez(エミリア・ペレス)』(コンペティション作品)がクロワゼットに登場した。だがレッドカーペットは一瞬、険悪な雰囲気に。出演者のひとり、セレーナ・ゴメスの態度が原因だった。 【写真】5月18日も大盛況だったカンヌのレッドカーペット ジャック・オーディアール監督の『エミリア・ペレス』は麻薬組織のボス、マニタスが人生をリセットするために性転換手術を受けて女性になる話だ。上映を観に来た豪華な面々を見ればこの作品への期待度もわかる。パレ・デ・フェスティバルの階段に現われたのは仏代表ラグビー選手のアントワーヌ・デュポン、サルマ・ハエックとフランソワ・ピノー夫妻、カーラ・ブルーニ、シャルロット・ゲンズブール、そして昨年のパルムドール受賞者のジュスティーヌ・トリエ監督などなど。 18時15分、「エミリア・ペレス」のキャストが全員でやって来て、レッドカーペットは一気に盛り上がった。トップバッターは元ディズニーアイドルのセレーナ・ゴメス。すぐにゾーイ・サルダナ、帽子がトレードマークの監督、そしてほかの出演者が続いた。 突然、観客から予想外のブーイングが起きた。セレーナ・ゴメスがフェンスの後ろで待ち構えていたファンに目もくれず通り過ぎようとしたからだ。一部のファンは朝から待っていたというのに。 ラジオ局「フランス・アンフォ」のリポーター、ルイーズ・エクランドがその時の様子を報じている。「険悪な雰囲気になりました。セレーナ・ゴメスが、私の正面にいたファンの人たちに挨拶しなかったからです。カンヌでこれはとても良くない態度とされます。彼女は私たちにも話しかけませんでした。向かい側に陣取っていた報道陣にも。前代未聞のことです。レッドカーペットでブーイングが起きたなんて。(中略)ストレスのせいでしょうか」 数分後、新情報が入ってきたようだ。「どうやら彼女は極度の"こだわり気質"でストレスが溜まっており、なにより健康上の問題を抱えていて、今夜は調子が悪かったようです。いまのところわかっているのはそれだけです」 この一件にもかかわらず、ジャック・オーディアール監督が登場すると周囲から盛大な拍手がわき起こり、レッドカーペットを歩いている間鳴り止まなかった。一行は大階段でフランス文化大臣のラシダ・ダティの出迎えを受け、グラン・テアトル・リュミエールへ向かった。 ジャック・オーディアールにとってこれは2021年の『パリ13区』以来、10作目の長編映画となる。今回の舞台は太陽が眩しいメキシコだ。コンペティション部門への出品はこれで6作目、2015年には『ディーパンの闘い』でパルムドールを受賞している。 『エミリア・ペレス』は2009年の『預言者』のような犯罪スリラーもので、メキシコを舞台に、麻薬密売人たちの超暴力的な世界をミュージカル仕立てで描いた英語作品だ。キャストにはラテン系俳優を揃えた。トランスジェンダー女優のカルラ・ソフィア・ガスコンがタイトルロールを演じ、共演はゾーイ・サルダナ、そしてセレーナ・ゴメスは麻薬王に新たな人生を歩ませるべく奮闘する弁護士の役だ。ベネズエラ人俳優エドガー・ラミレスとスペイン人女優アドリアーナ・パスも加わって最高の配役となった。麻薬密売の世界を舞台にしたこの寓話、ジャンルとしてはミュージカルコメディクライム映画になるだろうか。音楽はフレンチポップスの歌手カミーユがパートナーのクレマン・デュコルと手がけた。熱気に満ちた1日。
text: Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)