「貴重な経験、とても楽しい」 空港の最前線で働く軽度知的障害の25歳 職場の多様化へ周囲の支え #令和に働く
障害者と共に「収益上げる」
「日本の航空業界を引っ張る会社として、障害の有無や性別、国籍に関係なくあらゆる人が活躍できる優しい職場環境を目指したい」。JALグループでランプハンドリングを担う「JALグランドサービス(JGS)」の担当者は語る。 他方で、JALサンライト側にも、障害がある人でも「稼げる仕事」に就けるようにするという狙いがあった。「株式会社なので、収益を上げることもミッション。社員たちが給与以上のアウトプットが可能になる業務を担当できるよう養成していきたい」。 両社の理念と狙いが合致し、グループ初の試みとして谷奥さんら障害のある7人をJGSに出向させることになった。 7人が実際に駐機場に立つ前に、どの業務ならば担当できるか現場で作業を見学してもらい、本人たちの意向を確認。現在担うコンテナへの手荷物出し入れ業務が、手順が比較的シンプルで適任だと判断した。 一方、業務内容を限定したとしても、安全が最優先となる駐機場に立つには、専門用語が多いマニュアルを理解する必要がある。そこで知的障害がある谷奥さんたち向けに、難しい文章表現を絵に描いて分かりやすく伝える工夫をしたという。聴覚障害者には、スマートフォンのアプリを使用して現場で指示を伝えている。
ジョブサポーターが支援
「最初はうまくできるか不安だった」。 こう話す谷奥さんも2カ月もたつと仕事が板に付いてきた。障害者たちが現場の最前線で働くことができるのは、常に帯同して見守る現場経験豊富な「ジョブサポーター」の存在が大きい。 JGSを定年退職した熟練技術を持つ元社員を再雇用し、障害のある従業員のそばで業務を見守る。手伝うだけに終始せず、アドバイスや判断材料を与えて自主性を重んじる。谷奥さんは「前に『1千個以上積めばうまくなる』と言われたが、本当にそうだった」と振り返る。 谷奥さんを支えるのはジョブサポーターだけではない。業務に苦戦する姿を見れば、「こうすればうまく入るよ」と健常者の先輩たちが声を掛ける。休憩時間や業務の合間には同僚が航空機の仕組みについて話すことも多く、谷奥さんは「元々、航空機に興味はなかったけれど、好きになってきた」。 「航空機を間近に見られる場所で働くのは貴重な経験でとても楽しい。空港は普通なら経験できないことが多い。自分を成長させるためにも、業務の幅を広げていろんな経験をしたい」。谷奥さんは目を輝かせる。 ※この記事は千葉日報とYahoo!ニュースによる共同連携企画です