初黒星に黒田は「もったいない」
先発2試合目にして黒星がついてしまったが、黒田は、その結果を受け入れて淡々としていた。記者の質問にも丁寧に答える。いつもと変わらない。プロフェッショナルの顔だ。 「対戦したことのないバッターばかりだったので、様子を見ながらだった」 4月4日。3万6000人を超えて満員のナゴヤドーム。 0-0で迎えた5回だった。先頭のエルナンデスに真ん中に入る初球の甘いツーシームをライト前へ運ばれた。バントで送られ、松井にも、また2球目のツーシームの失投をライトへ。本来、左バッターの体に向かっていくはずのボールが真ん中へ入った。 「いいボールも、悪いボールもあったが、調子は決して悪いわけではなかった。中日打線が早いカウントから打ってくるのはわかっていたが、ボールが中へ中へと入ってしまった」 一死一、三塁でピッチャーの八木が、そのまま打席に入った。中継ぎに、まだ信頼を置けない中日ベンチの弱さが見えたシーンだ。勝利の女神は、こういうとき、どちらに微笑もうかと悩む。八木は果敢に初球から振ってきた。詰まった打球を前進守備をしいていたセカンドの菊池が猛ダッシュで処理。三塁走者のエルナンデスが、飛び出ていることを認めると、菊池は一気に三本間まで走ってタッチアウト。一転、舞台は、二死一、二塁へと変わった。 だが、中日ベンチは、大島に賭けていた。 初球は、フォーク。それがボールになると、続く146キロと表示された高めに浮いたツーシームを大島は見逃さなかった。 「ここまで、こういう場面でチーム貢献ができていなかったから、なんとかしたかった。メジャーで活躍した人から、1本でも打ちたいと打席にむかった」 レフトの頭上を襲った打球を見ながら「超えてくれ!」と大島は願ったという。 「(ツーシームが)高めに浮いた。自分では意図をしないボールだった」とは黒田。レフトオーバーのタイムリーツーベース。2人が生還して、なお二死二塁。 黒田が悔やむのは、亀澤への初球のカットボールだ。 「ツーアウトから……もったいない失点だった。亀澤にはカッター。狙い通りのボールだったが、結果的にもったいなかった」 亀澤は、波留打撃守備走塁コーチから「初球から思い切っていけ」と指示を受けていた。 「ドンづまり。落ちたところがよかった」 芯を外して詰まった打球は、ふらふらと菊池と外野の間に落ちた。 大島が3点目のホームを踏む。