強化される「オホーツクの要塞」――極東ロシア軍の実像と日本の安全保障
2020年代後半には最新鋭SSBN5隻が太平洋艦隊原潜部隊の中核を構成すると予想される[2022年秋に太平洋艦隊に配備された955A型SSBNクニャージ・オレグ](C)Yakovlev Sergey / shutterstock.com
4月半ば、ロシア軍がオホーツク海を舞台として大演習を行ったことは記憶に新しい。演習には人員2万5000人、艦船167隻(うち潜水艦12隻)、航空機89機などが動員されたというから(いずれもロシア国防省発表)、海軍主体の訓練活動としては近年稀に見る大規模なものであった。 ウクライナでの戦争 が続く中で「よくやるわ」という感想を持ったのは筆者だけではないだろう。また、この演習では対艦・対空・対潜戦闘訓練と並行して海軍歩兵部隊(海兵隊)による上陸作戦訓練も実施されたが、その親部隊である第155海軍歩兵旅団はウクライナ東部の激戦場であるブフレダールに投入されて壊滅的な損害を被ったばかりとされる。 ただ、別の見方をするなら、ユーラシア西部で苦しい戦争を強いられているロシアがその反対側に未だ少なからぬ戦力を留めおき、大規模な演習を実施するにはそれなりの理由が存在するはずである。ロシアにとって極東の軍事的意義とはなんなのか。極東ロシア軍はいかなる状態にあるのか。そしてこれらの事実を踏まえた上で日本の安全保障はいかなるものであるべきか。本稿ではこれらの点について考えていきたい。
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小泉悠