ミラノベストの「ボッテガ・ヴェネタ」 無邪気な子どもの冒険心をノアの方舟に乗せて
「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は、ファッションと工芸、そしてアートを融合しながら、日常生活も冒険に変えてしまう子どもの空想の世界を描いた。子どもの空想に際限がないように、「ボッテガ・ヴェネタ」のクラフツマンシップも限界知らず。圧巻の手仕事を、時には遊び心を交えながらエフォートレスに洋服やバッグ&シューズに変換するマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)のクリエイションは、今回のミラノ・コレクションのベストだ。 【画像】ミラノベストの「ボッテガ・ヴェネタ」 無邪気な子どもの冒険心をノアの方舟に乗せて
コレクションは、オーバーサイズどころか、ブカブカのジャケットを主役とするオフィススタイルで幕を開けた。ブカブカのジャケットは、子どもが背伸びをして、大人の洋服を着てみた雰囲気。そこにウィメンズでは、半身がパンツ、もう半身がスカートというボトムスを合わせる。手には、安っぽいレジ袋をポリエステルにレザーのパッチワークで模したバッグを持つ。いずれも、子どもの無邪気な発想を形にしたものだろう。マチューが思い描く子どもたちの世界では、大人も無邪気だ。グレーのジャケットに白黒のストライプ、そこにレザーのネクタイでタイドアップした男性は、子どもが背負うウサギ柄のピンクのリュックサックを背負う。ウサギは、カエルと並んで今シーズンのキーモチーフ。2種類の動物は、バッグに描かれたり、たっぷりの布を用いた洋服にブローチのようにあしらい、マチューらしい、布の動きを感じさせるスタイル作りに一役買った。
会場には、レザーで作ったゾウやニワトリ、キツネやイヌなど、15種類の動物のカバーを被せたビーズのクッションを並べた。ゲストの数は460人強というから、ショー会場には460頭もの動物と、それ以上の人間がいたことになる。マチューはノアの方舟もイメージし、動物と人間が試練や困難に立ち向かいながらも、調和して暮らすユートピアも思い描いた。子どもの純心は、こうしたユートピアに欠かせないものなのだろう。ショーには時折、動物のウサギの毛並み思わせるフィルクッペや、もっと獰猛な動物を彷彿とするハサミを入れたレザーのコートなども登場。シワを寄せたビジネスウエアは、子どもの無邪気さの象徴か?それとも洪水を方舟で乗り越えた大人たちの姿なのだろうか?