閉経後に骨粗鬆症になりやすくなるのはなぜ? 医師が解説する原因と予防・治療法
閉経後の骨粗鬆症治療を医師が解説 骨密度改善は薬物治療が第一選択? 食事療法や生活指導の内容は?
編集部: 骨粗しょう症と診断された場合には、どのような治療が行われるのですか? 渡邉先生: 骨粗しょう症の治療のベースは薬による治療が原則です。現在は骨粗しょう症の新薬が数多く登場しており、病状に応じて選択できる幅が増えました。骨粗しょう症治療薬には主に以下の3つがあり、必要に応じて選択します。 1.骨吸収を抑制する薬(骨を壊す働きを抑える) SERM(サーム)製剤、ビスフォスフォネート製剤、デノスマブ製剤など 2.骨の形成を促進する薬(骨芽細胞が骨を作る働きを促進する) テリパラチド製剤、アバロパラチド製剤、ロモソズマブなど 3.骨の材料となる薬 ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、カルシウム製剤、マグネシウム製剤、ビタミンB製剤など 編集部: 薬物療法以外には、どのような治療が行われるのですか? 渡邉先生: 骨粗しょう症の治療の目的は骨密度や骨質を改善させ、骨折を予防することにあります。しかし、薬による治療だけでは骨密度が上がりにくいことも多く、運動療法や食事療法などを行い、骨への物理的刺激を上げたり、骨が作られるための材料となる栄養素を十分に摂取したりすることでより骨密度が上昇しやすくなります。 編集部: 治療効果はどれくらいで現れるのですか? 渡邉先生: 骨粗しょう症は、女性ホルモンの減少に伴いほとんどの女性は避けては通れない病気であり、一生治療の継続が必要という場合も少なくありません。せっかく治療を始めても、医師の指示通りに服薬を継続できないという人もいらっしゃいます。しかし、骨粗しょう症の治療は、最低4カ月毎でないと健康保険を使って検査することができないことに加え、やはりそれくらいは検査と検査の期間をあけないと骨密度が上がったのか評価が難しいものです。「なかなか治療効果が見られない」「特に痛みなどの症状がないから治療は必要ない」など自己判断せず、あまり構え過ぎず、早めに検査・治療を始めて、根気よく継続することがとても大事になります。 編集部: 薬を使わずに治療することはできませんか? 渡邉先生: 「なるべく薬を使わずに治したい」とよく相談を受けます。生活習慣病と呼ばれる糖尿病、高血圧、脂質異常症などは、暴飲暴食や運動不足などが主な原因になるため、原因に対して食事療法や運動療法が最も大事になってきます。しかし、閉経後の女性の場合、骨粗しょう症はエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が大幅に減ったことが主な原因となっていますので、食事療法や運動療法だけで治療するのは原則難しいと思ってください。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。 渡邉先生: 女性は閉経が近くなったら必ず自分の骨密度を調べてください。日本では検査が必要な年齢なのにきちんと検査を受けている方はたったの10%程度と非常に低い状況であり、結果的に高齢者の大腿骨や背骨の骨折を大量に招いています。大腿骨と腰椎の骨密度を最低でも毎年検査することに加え、レントゲン検査でいつの間にか骨折がないか、血液検査で破骨細胞や骨芽細胞の働きやビタミンDやカルシウム、タンパク質が不足していないかまで調べることもとても大事です。糖尿病や脂質異常症などが骨粗しょう症と密接に絡むケースも多いので、必ず血液検査までトータルで行い、骨粗しょう症のリスクを測定するようにしましょう。一方女性だけでなく、男性にも骨粗しょう症は発症するので、60歳を超えたら測定する習慣をつけましょう。「糖尿病などの基礎疾患がある」「両親のどちらかが骨粗しょう症だった」などの場合には、40~50代でも定期的に検査を受けて頂くことをおすすめします。