USスチールが最大の敗者に…バイデンの合理性を無視した阻止声明に非難殺到!WSJ紙は「腐敗」と猛批判
全米鉄鋼労働者組合はバイデンの決定を歓迎
<全米鉄鋼労働者組合のデビッド・マコール会長は、日本製鉄による買収案を支持しなかった。同氏は、2023年に新日鐵住金に買収提案で敗れたクリーブランド・クリフスとの提携を支持している。クリーブランド・クリフスのCEOであるロレンコ・ゴンカルベス氏は、新日鐵住金の買収案を阻止するようホワイトハウスに働きかけた。彼の目的は、関税や「Buy America」規則によって外国競争から保護された鉄鋼カルテルを形成することである> 今回の決定に際し、マッコール委員長はコメントを発表し「バイデン大統領の決定を歓迎する。これが組合員や国家安全保障にとって正しい行動であることに疑いはない」「USスチールが将来にわたって雇用や健全な地域社会、そして、強固な国家・経済安全保障を支え続けることを確信している」と決定を歓迎するコメントを出している。
株価がこの一カ月下がっているUSスチール
しかし、鉄鋼労働者にとって今回の決定が、本当に歓迎すべきことなのだろうか。不思議でならない。 こうした経緯の結果、USスチールの株価は、この1か月(2025年1月5日現在)で-25.59%の大暴落を起こしている。対する日本製鉄の株価は、1か月で5.12%の上昇である。どれだけUSスチールに有利な取引であったのか、これが投資家の評価である。むしろ日本製鉄は儲かりもしない余計なことにお金を突っ込んでいたと投資家に思われていた可能性がある。 このままUSスチールが倒産した場合、鉄鋼を使用するアメリカの製造業者はコストの上昇に直面し、競争力が低下する。アメリカでの電気自動車の製造コストも上昇するため、米国の自動車メーカーは日本製鉄による買収を支持していた。USスチールの幹部は、買収が破談となれば工場閉鎖が発生する可能性を警告している。繰り返しになるが今回の決定が労働者にどのような利益をもたらすのか甚だ疑問だ。 今回のバイデンのとった行動は、狭い意味では、USスチールの一人負け。広い意味ではアメリカの一人負けを招くというのが、妥当な評価であろう。
小倉健一