USスチールが最大の敗者に…バイデンの合理性を無視した阻止声明に非難殺到!WSJ紙は「腐敗」と猛批判
アメリカ市場での投資に慎重になる各国企業
次に実績として強調されているのが中国叩きだ。「私は、中国からの鉄鋼輸入に3倍の関税をかけることで、米国の鉄鋼労働者と鉄鋼生産者の競争条件を公平にするために、断固とした行動をとった」というが、これは海外の工場で生産されたものに関税をかけた話であり、今回は国内の企業が外資系に買われるという話と全く話が違う。 鉄鋼業が外資系であることが、アメリカの安全保障を揺るがすとは到底思えないが、外資系であることが買収阻止の決定理由とされるのであれば、アメリカの多く企業は撤退を余儀なくされることになる。バイデン大統領の決定は、日本やヨーロッパの企業に対してアメリカ市場での投資に慎重になるシグナルを送ると指摘している。 そもそも論ではあるが、自由貿易はできるかぎり推進したほうが、お互いの国にとって経済的にメリットが有ることは、実証データでも証明されている歴史的ファクトだ。TPPが始まる前は、TPPで日本の農業が滅びるかのようなデマが蔓延したが、今起きていることは日本の農家の収入アップである。自由貿易の恩恵を、潰れるとされた農家が一番感じていることだろう。今回の決定で、鉄鋼の値段が上がることは間違いなく、米国の製造業に打撃を与えてしまうだろう。 であるから、評価の組み立てとしては、外資であろうとなかろうとどんどん自国に投資を呼び込んだほう良いということが一つ。次が、中国包囲網をつくろうとしているアメリカにとって、日本との連携を強めたほうが得策であるという点で変だということになろう。USスチールが倒産して喜ぶのは、競争相手の中国鉄鋼業にほかならないのである。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは「腐敗だ」と非難
何より、日本製鉄とUSスチールは「バイデン大統領の決定が老朽化したUSスチールの施設に対する数十億ドルの投資を否定するものであり、労働者の雇用や地域経済に深刻な影響を及ぼす」としている。特に、ペンシルベニア州やインディアナ州の施設における生産能力の維持が難しくなる可能性が指摘されている。USスチールの労働者は、日本製鉄による買収が地域経済と雇用を強化する可能性を支持している。 日本製鉄は、バイデン政権の対応に強い不満を示しており、CFIUSへの書簡でホワイトハウスが第三者の影響を受けたことを非難している。この第三者には、以前にUSスチール買収を試みたクリーブランド・クリフスのCEOやUSWの指導者が含まれるとされている。 米ウォールストリート・ジャーナル(1月3日)は、<取引の経済性は、U.S.スチールとその労働者双方にとって圧倒的な理にかなっている><日本製鉄はUSスチールの老朽化した工場を近代化し、労働協約を守るために27億ドルの新規資本を約束した。 日本製鉄は労働者に5,000ドルのボーナスを支給し、雇用を保証し、CfiusにU.S.スチール工場の生産能力削減を阻止させることに同意するなど、政治的な便宜を図った>として日本製鉄の動きを歓迎しつつ、今回のバイデンの決定を<腐敗>だと厳しく糾弾し、こうした決定の背景をこう説明している。