COP29、11日に開幕 温暖化対策の資金拠出、トランプ氏返り咲きで暗雲
世界各国が地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が11日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕する。先進国が途上国に拠出する温暖化対策資金に関し、どの程度の上積みで合意されるかが焦点となる。ただ、「気候変動はでっち上げ」と主張してきた米国のトランプ前大統領が大統領選で勝利したことで、温暖化対策を巡る国際協調に綻びが生じる可能性もある。 日本や世界では近年、温暖化を背景に猛暑や干魃、豪雨、洪水などの被害が頻発。二酸化炭素など温室効果ガス(GHG)の排出削減が急務となっている。 各国は2015年のCOP21で採択した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」などに基づき、世界の気温上昇を産業革命前から「1・5度」以内に抑える目標を定めた。それには30年までに世界のGHG排出を19年比で43%、35年までに60%それぞれ削減する必要がある。各国はGHG削減の国家目標(NDC)を5年ごとに提出しているが、各国が現在のNDCを全て達成しても、「1・5度」目標の実現には及ばないとされる。 途上国には先進国から資金を受け取ることを前提としてNDCを設定している国も多い。途上国は気候変動で被った「損失と損害」への支援も先進国に求めており、温暖化抑止に向けた資金確保の重要性が増している。 先進国は従来、途上国支援のため25年まで年間計1千億ドル(約15兆円)の資金拠出で合意していた。COP29では25年以降の新たな資金拠出のあり方が主要議題となる。 拠出資金の規模は従来の「年間1千億ドル」が下限となるが、途上国は先進国に「年間1兆ドル」の拠出を求めている。これに対し、先進国は大幅な増額に慎重な上、中国やインドなどGHG排出量が多い新興国も資金拠出に参加すべきだとの立場だ。資金の配分先に関しても、一部の途上国に限定すべきだとする先進国と、特別扱いを求める太平洋島嶼国や後発の開発途上国などの国々で見解が分かれている。 一方で、トランプ氏の米大統領返り咲きは、ただでさえ先進国と途上国の間に横たわる断絶を深めかねない。トランプ氏は前回の大統領任期中、パリ協定から米国を離脱させた。米国はバイデン政権下で協定に復帰したものの、来年1月に正式に発足するトランプ新政権は再び協定離脱を宣言するとの観測が強い。
ロイター通信はトランプ氏の返り咲きで「(COP29での)合意形成の機運が弱まった」と指摘。「米国の賛同がなければ、より野心的な気候資金の推進はほぼ不可能になる。そうなれば、途上国は欧米諸国の気候問題への野心を真剣に受け止めなくなる」との専門家の見解も伝えた。(小野田雄一)