神山雄一郎の背中を追い続けてきた52歳競輪選手「最後を1着で締めた、やっぱりスター」電撃引退のレジェンドを労う/熊本競輪
熊本競輪では「トータリゼータ熊本杯(FI)」が24日に2日目を開催。A級一般2Rを走った小坂敏之(52歳・栃木=74期)に話を聞いた。 今日24日、神山雄一郎の引退という競輪界を揺るがすビッグニュースが発表された。小坂敏之は神山の高校の後輩で学生時代から35年もの間、神山の背中を追い続けてきた。公私ともに交流が深く、固い絆で結ばれたレジェンドの引退について語った。 「俺の兄貴(小坂勇・引退)が高校で自転車をやっていて、神山さんの後輩だったんです。オレも中学から自転車に乗り出して、その頃からの付き合い。自転車競技が抜群に強くてタイトルを取りっぱなしで、しかもアタマのいい進学コースにいてカッコよくてね、何もかもがすごかった。高校時代から何度も地元新聞の一面になってね。最初は憧れだったけど、すごすぎて、そんな存在ではなくなったけど(笑)」 選手になってからも親密な関係は続き、神山が追込に転身した際には、小坂のマーク屋としての技術を高く評価した神山が教えを請うたことも。それゆえに一時期、小坂は“神山に競りを教えた男”との異名を取った。 「そうそう、忘れていたなぁ。あるとき、神山さんを落っこどしたこともあった。『オレもそうなりたい』って言ってきたので、バンクで併走の練習をしていたんですよ。そうしたら思い切りコケたんだ。『大したことない、ハハハ』って笑っていたけど、あのときは焦ったなぁ(笑)」 プライベートでもやり取りする機会が多く、小坂とはいつも2人でじっくり話し込んだ。熊本開催の直前も連絡を取っていたといい、引退に関しては思うところがあったようだ。 「以前に辞めるタイミングについて話をしたことがあったんですよ。こっちとしてはあれだけの選手だから吉岡(稔真)さんや村上(義弘)みたいにちゃんとした区切りで辞めてほしいと思っていたんです。だって、王者が負けて離れて9着なんて見たくないでしょ。だけど自転車が大好きだから辞め時を迷っていたんじゃないかな。見ていて、葛藤している様子でしたね」 小坂が感じたひとつの区切りは、7月の宇都宮での失格ではないかという。 「6月に函館で失格して来期のA級が決まったでしょ。あのときは走る気だったんですよ。今期を頑張ってS級点を取って、来期1期だけ緑のパンツを履いてまたS級に戻れればと。そうすれば、そのあともしA級に落ちたとしても、1回走っているからって自然に走れる。でも7月の失格で2期(1年間)A級でしょ。1年間はさすがに長いし、引き際と考えたと思うんです。だから、あの失格はここが区切りじゃないかって神様に背中を押された感じがあったんじゃないかなあ」 人間、神山雄一郎を知り尽くす小坂だからこそわかる部分がある。偉大な先輩はバンクを去るが、小坂にとってはいつまで経っても大きな背中がまばゆく映る。 「決して力で圧倒するタイプじゃなかったけど、競輪がとてもうまかった。それに華がありましたよね。最後に1着を取って締めるあたり、やっぱりスターなんだなと。今度会ったときにいろいろ話を聞きたいと思います。お疲れ様でした」とねぎらった。(netkeirin特派員)