「ダメなら心残りなく引退できる」再起をかけた全日本歌謡選手権 失神バンド解散後のソロ挫折 まさかの紅白落選 真木ひでとさんインタビュー
全日本歌謡選手権が再起のチャンスに
ーー10週勝ち抜けばレコード会社と契約。五木ひろしさん、八代亜紀さんが世に出るきっかけになった日本テレビのオーディション番組ですね。 ひでと:はい、それでダメなら心残りなく引退できるなとも。全日本歌謡選手権は本選の前に予選があるんですが、会場の日本テレビ第二分室に行くと300人くらい来ている。「こんなにいるんじゃ予選落ちかもしれないな」と思いましたが、肉声で3小節ほど歌うだけの一次審査、安いワイヤレスマイクで歌う二次審査を経てどうにか合格。本来は1人だけなんだけど、僕ともう一人ルックスのいいモデルの男性がいて、特別に2人とも本選に進むことになりました。 1週目、2週目の収録は忘れもしない山梨県の富士吉田市民会館。1週目のゲスト歌手は秀樹君でした。マネージャーが交流のあった元・ジ・エドワーズの榊原さとしさんだった縁で、彼のことはデビュー当時から知っていました。ステージアクションを教えたこともあるような関係だったので、僕が挑戦者として出場しているのを知ってびっくりしていましたね。 ーーお互いなんとも言えない気持ちだったでしょうね。本選ではどんな曲を歌ったのでしょうか? 1週目が『船頭小唄』、2週目が『命かれても』、その後『望郷』や『噂の女』ときてグランプリの10週目は『よこはま・たそがれ』でしたね。 ーー選曲が演歌ばかりですね。 ひでと:グループサウンズ時代に共に"GS御三家"と呼ばれた沢田研二さん、萩原健一と今の自分を比較したんです。沢田さんはポップスで大成功している、ショーケンも押しも押されぬ俳優になった。じゃあ自分には何ができるんだろうと。『夜空の笛』の頃から発声を腹式に変えて、歌謡曲や演歌をレパートリーに加えていましたが、いちから再チャレンジするなら本格的に演歌で行こうと思いました。 ーー全日本歌謡選手権を振り返っていかがですか? ひでと:厳しい評価をする番組だったので、毎週緊張しましたよ。5週目には旧知の橋本淳さんが審査員席にいらっしゃったんですが「オックス時代のほうが情景描写ができていた」とダメ出しされました。ですが厳しい評価もある一方、船村徹先生、西沢爽先生は「ひでとは新しい演歌だ」と僕のシャウトまじりの歌い方を気に入ってくれました。当時のビデオは今も手元にあって、たまに見返すんですが、はっきり言ってそんなに上手く歌えていません。でも再起に賭ける熱量がひしひしと伝わってくるんですよ。全日本歌謡選手権は僕にとって再起のチャンスをくれた、歌手としても心構えを作ってくれたかけがえのない番組ですね。