学校優先の自衛隊コンサート、「募集活動」と追及する共産市議と否定する後援自治体の溝
広島県福山市で11月に行われた自衛隊ファミリーコンサートに、共産党と共闘する団体が批判の矛先を向けた。市と市教育委員会が「後援」するなどしたのは、自衛官の募集に対する協力になりかねないとし、議会でも共産市議が市などの姿勢を追及したのだ。コンサートは、学校単位の申し込みで優先的に予約されたが、生徒らの個人情報が自衛隊に渡ってしまうとする主張に、主催者は「あり得ない話。レッテル貼りだ」と一蹴する。 【写真】「募集活動」と追及する共産党の三好剛史市議 ■傍聴席に支持者の姿も 「コンサートの目的が(自衛官の)募集活動の一環だったということは明らかではないか」 12月10日、一般質問に立った共産党の三好剛史市議がこう指摘した。傍聴席には、支持者とみられる高齢者らの姿が目立った。 海上自衛隊呉音楽隊(広島県呉市)によるコンサートは11月30日、約2千人を収容できる中四国最大級のホールで開かれ、事前予約の来場者で8割方が埋まった。主催者によると、市内では初の試みとあって、その盛況ぶりがうかがえた。 主催者は福山市の民間企業などでつくる自衛隊福山地区募集協力会。これに、世界バラ会議福山大会実行委員会(事務局=市世界バラ会議推進室)が「共催」し、市と市教委が「後援」した。 市側が名義使用を許可した経緯は明快だ。実行委としては、令和7年に迫ったバラ会議の機運醸成を図るため。市と市教委も含め、共催・後援の取り扱い要綱に照らし、コンサートが「市民の教育、学術、文化等の振興に資する」との判断に過ぎず、主催者が公序良俗に反するわけでもない。 ■「提供の事実一切ない」 コンサート開催を9日後に控えた11月21日、憲法9条改悪ストップ福山実行委員会と第69回福山市母親大会実行委員会、福山民主商工会が市長と教育長宛てに、共催と後援の取り消しを求める要望書を提出した。その場を仲介したのは三好氏ら共産市議2人だという。 《中高大学生は学校からの申込で優先予約可》。要望書はコンサートの案内チラシに記載された文言に目を付けた。その上で「募集対象年齢に達していない中学生まで対象にして『学校からの申込み』で個人情報が提供される」と懸念を示した。 実際はどうか。自衛隊福山地区募集協力会の事務局長を務める会社経営、今井博明さん(66)によれば、名称こそ募集協力会だが、コンサート開催と自衛官募集は無関係という。優先予約としたのも「多くの子供たちに、純粋にレベルの高い音楽に触れてほしかったから」。学校単位では、市内の2中学校から計約40人が参加したが、会場でも募集行為は一切していないことを市の担当者も現場で確認している。