三菱UFJ行員、貸金庫から「十数億円」窃盗の衝撃 銀行に「顧客の言い値」で全額補償する責任あるか?
●現金を入れていても「銀行が賠償することになるのでは」
──顧客への補償はどのように進められるのでしょうか。 まず、顧客の物を盗んだ元行員が顧客に対する賠償責任を負いますが、銀行も使用者として使用者責任を負うことになります(民法715条)。したがって、銀行も顧客に対し賠償責任を負うことになります。 銀行が顧客に賠償するとした場合は、まず被害者から被害品の聞き取りを実施し、金庫に入れたときの防犯カメラ映像との照合や、懲戒解雇する前に被疑者からある程度事情聴取している場合には聴取内容との突合せで被害品の調査をおこない、時価額での賠償をすることになると思われます。 ──現金を貸金庫に入れていた場合はどうなるのでしょうか。 三菱UFJ銀行の貸金庫規定では「現金を入れてはいけない」とは書いてないので、貴重品に準じるものとして入れても規定に反するものではないと考えてよいかと思います。ですので、顧客が貸金庫に現金を入れていた場合であっても、銀行側は賠償することになると思います。 【取材協力弁護士】 澤井 康生(さわい・やすお)弁護士 警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。 事務所名:秋法律事務所 事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/